クラカメ好きですか


知らなかった世界(ビトマチック、ベラマチック、ロボット

 この道に入った当初、外国製カメラで名前を知っていたものといえばライカ、ローライフレックス、ミノックスそしてコンタックスであった。それも、型式がどうこうという知識は皆無だったのである。つまり、一般のみなさんと全く同じミーハー状態であり、今考えると赤面してしまう。
 ステレオカメラからライカという正当な道に入って間もなく、アスキーネットでキエフ四型のフルセットをO氏に推奨され購入した。35,50,85,135mmレンズの揃ったフルセットであり、恐ろしく格安だった記憶がある。これらのレンズで写してシャープさに仰天、そのころ使っていた全自動ペンタックスSF7の35mm-105mmの暗めのズームよりも格段にクリアな画像が撮れたのである。全く知らなかったソ連製カメラでこの結果であった。家人を撮影し引き伸ばしたもののあまりのシャープさ、真実さを写し得たが故に抗議の声があがったという笑えない話も付いている。それもそのはずこのカメラとレンズの先祖は、独逸・コンタックスという由緒正しいものだったのである。
 これをきっかけに世の中にはまだまだ知られていない優秀なカメラが多数存在していることを知り、いわゆる中級カメラ発掘にも非常に興味を覚え今も続いているのである。期待を抱いて新たな種類のカメラを手いれたものの名前倒れの性能に幻滅したり、名前も知らなかったカメラのショットに大感激しながらも次第に自分に合ったカメラを手元に残してきたと思っている。今までに売り買いをしながら資金繰りに苦労しつつ集めてきたカメラは、写せるということではささやかながらも最高のコレクションだと負け惜しみを言い続けている。(笑)資金が無制限であれば手にしたすべてのカメラを残すことが出来たのであるが、人生での幸せ同様に所有できる容量が決まっていそうである。従って自慢できるような内容には程遠い状態で足踏みしているのである。あとは人生修養を極めることで人間の幅を拡げ、人生と同じく手元のカメラ仲間の充実を図るしかなさそうである。
 このような思いを持ちつつ心に感じた種々のカメラについて書いてみたい。まずは、私に新しい驚きを与えた幾つかを紹介してみたい。

 最初のカメラは、今でも何かあれば引っぱり出して使っているフォクトレンデルのビトマチックIIbである。ビトマチックシリーズの兄貴格でカラースコパー50mm/f2.8を装備しているこのカメラは、あらゆる条件下で安定した結果をもたらしてくれる。絞り気味でのシャープさは抜群であり、開いた絞りでは潤いを含む写りで、特に赤、緑の表現では独特の色の乗りであり、日本のレンズとは全く異なる世界が広がってくる。
 真夏の散歩中、当時工事中であったJR東日本本社ビルを完全な逆光で写し、フレア一つ出ない頑健な写りは驚きであった。また逆に、雨の降りしぶく川越・喜多院での語らう五百羅漢像の立体感は今まで写し得たことのなかった質感であった。
 H田カメラ店で購入したオーストリア警察放出の逸品である。プレミアなしの価格で売ってくれたのはH田さんらしいなと嬉しい限りである。「このOBG(エーベーゲー)という刻印、珍しいんだな。定期的にメンテしていた跡があったよ。」とだけお告げがあった。(笑)
(正確にはOウムラウトである)

ビトマチックIIb カラースコパー50mm/f2.8 ボロ市の日の大雪)
ポジからデジカメへ転写。周辺がずれました。(汗)

 次のものは、これまたH田カメラで手に入れた東ドイツのヴェラマチック(Werramatic)である。実像式ファインダーの鋭い切れ味の見えに参ってしまった。肉眼で見るより鮮明に視野が開けているではないか。追針セレン式露出計は当時の最先端技術、更にはレンズシャッターながら35,50,100mmのレンズ交換まで出来るのである。ビトマチックIIbと同様にファインダーの右隅にはシャッター速度と絞り値が微小な鏡とプリズムとで合成されて見えている。砲弾型のレンズキャップを付けた姿は現代でも通用しそうなデザインである。
フィルム巻き上げはレンズ鏡胴を回転させるのだから素人目には自動巻上げ式としか映らない。亡くなった母に使わせたところシャッター押下後フィルム巻き上げ音がないので故障したのではと詫びられたことがある。それほどまでに現代カメラに見まごうデザインなのである。
このカメラで秀逸なのは35mm/f3.5フレクトゴンでありその鮮明さは一級品である。50mmはテッサーなので悪かろうはずがない。「鷲の目」と呼ばれるにふさわしい鋭い写りである。
ただ、100mm/f4カージナルは、どうやら不良品を掴んだようで未だにまともに写ってくれない。山崎光学へ後玉の補修を依頼したのだが小さい玉なのでバルサム内の泡は取れないとのこと。いつも甘いピントでこのレンズだけは出番がないようである。
 今年の正月の世田谷ボロ市で二台目のヴェラマチックを偶然、超格安で入手することができた。こちらは東側向けだったようで軍艦部にはカール・ツアイス・イエナのロゴが書かれており一台目の茶色の革ケースよりも丈夫な黒の革ケース付きの美品である。最近は、このようにカメラの方から微笑みかけてくれるようになったような気がしてならない。人間修養が高まってきたのであろうか。(笑)


 3台目は、やはり機械に強いH田カメラで入手にしたロボットロイヤル24というゼンマイ駆動カメラである。ゼンマイ駆動はリコーやらフジやらの製品を何種類か使ったことがあり、その緩慢な動作にカラクリ駆動方式ではこんなものであろうと思っていた。
 ところが、このカメラを手にして驚いたのは連写速度が凄い。ニコンF4顔負けの秒六駒である。写りもシュナイダーのクセノン45mm/f1.9という玉なので大変良く写っている。映写機のメカニズムをスチール写真機に組み込んだとしか思えぬ機敏さであり、日本のゼンマイカメラの動きが玩具的に思えてならなかった。連写した一駒一駒は当然のことながらクセノンの写りである。人物像の微妙な変化が大変面白い。このカメラ用の交換レンズ群を集め、楽しんでみたいという気になってしまっているのはこのカメラの持つ魔力のようなものかもしれない。
 と思いつつも一年近く経ってしまったが、まだ四本のフィルムしか通さず連写は鉄道写真のみではカメラが泣いてしまっているようである。いったい何を写せばこのカメラは威力を発揮するのか迷っている。まだまだ駆け出しのロボット病である。
 そうそう、まだフィルムを入れたままであることに気が付いた。さて、なにを連写しようか、また悩ませてくれそうである。







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