
Western Maryland Shay修復記録
今年の梅雨時は、その昔に入手できず涙した機関車情報が銀座伏魔殿に存在す る話が入り、どうしようかと揺れ動く期間でもあった。古いマニュアルを入手し、子細 にチェックしたところでは、その構造は複雑系機関車であることも分かり、これは見 逃せぬ適価の機関車であると判断し、思い切ってウチに呼び込んでしまったのであ る。「無理したなぁ−。」という感想が第一である。 これで再生できなければ金属ゴ ミですある。(苦笑)
到来した機関車・Western Maryland SHAYを細かく点検するとやり甲斐のある 課題満載である。再生プロジェクトとして立ち上げるには最適な機材であったのであ るが、もっと安くても良かったのかも知れない。 それでも再生を楽しめると思えばそ れも値段のうちだと考え直すことにした。(苦笑) それはともかく、この機関車は、30年近く気になって仕方のなかったものなので何と か完動品にしなければという気持ちである。 実は、全く時を同じくして大型機関車 愛好のItabashiさんがとても真似のできない完全再生にチャレンジ中である。その記 事を参考にさせていただきながらボチボチ進めて行くつもりである。どうやら機関車 の出所は同じところのようなので発生する問題も同じもののような気がしている。 小生のブログでたまに進行状況を書いているのであるが、このサイトでは、一呼吸 おいての分解/再生記録としてまとめるつもりである。

見かけはご覧のように機械の塊の機関車模型である。1984年に売り出された古 いものであるが、意外に綺麗なのは動かしてなかったのであろう。 ところが、簡単 なチェックでも問題点を幾つか見つけてしまった。 メーカ組み立て品であればこの まま強制的に火を入れてもいいかも知れないが、キットを組み立てたまま長期間放 置されていたようである。 となると組み立てた御仁の技量次第である。 更にはこ の機関車には一度も火が入っていないようで、オイルや煤の汚れもない新品同様で ある。 色々判断しなければいけないようである。
綺麗だから高価で完全だという通念は機械には通用しない。長期間放置したままだ と場合によっては始末に負えないことも多いのである。ましてや素人が組み立てたも のはまず信頼性は低いであろう。 陳列棚で見た際は、直ぐにでも走ってくれそうな状態に見えたのであるが、後日の 分解結果では内部組み立てにも様々な問題があったのでまず動くことはなかったで あろう。もとのオーナーは始めから動かす気はなかったのかも知れない。未塗装の ままの金属製プラモデルという作り方である。(苦笑)

エンジン部の拡大写真である。 120度位相のクランクシャフトの軸受けには微小な ボールベアリングが使われており、前作の阿里山SHAYエンジンとは構造も含め天と 地の差がある。 弁装置は実物と同じくスチブンソン弁である。 ただし給油された 痕跡がないので動かしたとは思えない。 ダミー空気圧縮機周辺配管が省略されて いる。この箇所だけでなく随所で配管を手抜きしていることに気が付いてしまった。 それに白い瞬間接着剤の跡が至る所にあった。面倒な箇所は瞬間接着剤で止める という安易な組み立てが前オーナーのコンセプトのようである。
このエンジンは複雑でかつ調整困難なために完成品で供給されていたと聞いたので エアテストで回転すればエンジンはそのまま使うつもりにした。もし不調であればや むを得ないが分解して組み立て直すこととする。
ところで我が家には1982年に作ったギヤードロコのClimaxが今でも元気に活躍中 である。是非ともペアで運用したいと考えている。
さて、この機関車は現在でも 米国 West Virginia州 Cass Scenic Railroad で観光 列車を牽いて山登りをしているようである。 このNo.6機関車の重量は160噸であり JNR C62のサイズと軸重を超える大きさである。現地ではBig sixと呼ばれている ようである。 たかが森林鉄道の機関車と思ったら恥をかいてしまいそうな巨大なギ ヤードロコなのである。 彼の地の写真では、190cmある大男の頭がシリンダーの下 部にも届いていないのである。小振りな日本の機関車しか見たことなのない我々に は想定不能な山の中の機関車である。数年前に偶然手を入れたVHSテープにはま だ整備前のWestern Maryland SHAY 6号機の工場入り光景が写っている。こ れも何かの縁であろう。
SHAYという型式の機関車は、車体の横に付けられた縦型三気筒エンジンの力を左 右に延びるシャフトで各動輪に伝える構造である。変速比1:2のベベルギアで駆動 方向を直角に変換し動輪での駆動力を倍増しているので急勾配など何のそのの機 関車である。 日本でよく知られているのは戦前導入された台湾・阿里山の18噸や 28噸SHAYですあるが、この機関車の160噸という重量からその巨大さを想像出来る のではないだろうか。
模型では此の時代(1984年)のアスターはギヤードロコの供給に熱心であった。 阿 里山SHAY、Climaxそして此のWM-SHAYと続けざまに新製品を送り出すとともに 今でも銘品として45mmライブスチームの頂点を占めるBigboyも世に送り出してい た。
ところでこのエンジンは、ボア10mm、ストローク12mmという小型一番ゲージ機関車 並みのシリンダーサイズである。 それが三気筒なので出力は大型機並みである。 模型エンジンの出力計算式を適用するとギアでパワーアップした連結器出力は1. 2kg程度となる。 速度では比べるべくもないのであるが、英国最強の四気筒機関車 Duchessの1.08kgを越えるパワーである。 と言うことから考えるとこの機関車は 45mmゲージライブスチームでは強力な機関車の部類に入るのである。
という機関車をこれから再生するのである。のんびりとストレスを溜めないように仕 上げていきたいと考える。 現在作業手順や必要部材を準備しているところである。 これもまた楽しみである。 |
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