ライブスティーム雑記帳

機関車考(4) 毛色違いのライブスチーム(2011.1.3)


スチーム・ロードローラー、蒸気消防車など

1.あらまし
 最初は LMS Duchessという大変有名で精密な機関車を採り上げたが、二番目は私の模型人生に大いに影響を与えたシンプルな蒸気模型とした。
ここで紹介する模型は、玩具に属するようであるが、エンジンの構造、燃料を燃して蒸気で動く作動メカニズムはライブスチームそのものである。一般の玩具と違うところは取り扱いに充分な注意が必要なことである。 室内で遊ぶことが出来るように排気を凝結水分離タンクへ、エンジンから洩れるオイル受け皿もあって、汚れを撒き散らさないような工夫がある。このような当たり前の工夫に機械玩具としての長い伝統を感じるのである。

我が家のスチームロードローラーは、子供たちが生まれる前から存在し、未だに健在なのであるからドイツの機械玩具の頑強さには頭が下がるのである。

 その一方でこのような素晴らしい模型が少年少女達の話題に上らないことがライブスチームが普及しない一因のような気がする。
このような玩具で是非とも子供達を楽しませてあげたいものと常々思っているのであるが・・・・。

ものムック本は、時流の先端というべきケータイやパソコン、デジカメといった製品で溢れているのであるが、此処で採り上げた蒸気玩具のように数十年という時間を超えてユーザーを楽しませてくれる製品がどれだけあるのだろうか?
 数年前に登場し誉めそやされていた商品のほとんど残っていないことを考えるとこれらの本の記事は詐欺ではないかと考える。 編集者諸子の慧眼に期待したいのであるが、今のところ節穴とでしか思えないものにしかお目にかかれないのである。(苦笑)


2.どんなもの?
前置きが長くなったのであるが、これらの玩具の姿を見ていただきたい。
ロードローラー



蒸気消防車



定置型蒸気機関



いずれの模型も蒸気で動くドイツ製の玩具である。
前二つはWilsco社の製品で現在も販売されている。しかしながら円高というのに意外に高い値段で売られているのは大いに問題である。輸入代理店の販売方法、これでいいのだろうか?

定置型機関は仲間から譲ってもらったのであるが、大変存在感のある製品である。残念ながら現在は販売されていないようである。フライシュマンというドイツの模型会社のものである。


3.エンジンの仕組みは?
 いずれのエンジンもスリップリターン・クランク弁機構でピストン弁で蒸気を分配するダブルアクション機構の本格的な蒸気機関である。ダブルアクションとは自動車のエンジンのようにピストン上部のみでエネルギーを受けるのではなくピストン下面でもエネルギーを受け取るものである。ライブスチームの一般的な方式と同じものである。
次の画像は蒸気消防自動車のもので縦型になっている。



こちらはスチームロードローラのエンジンである。同じWillsco社の製品なので同じ型式のエンジンであるが、こちらは水平に取り付けてある。いずれのエンジンの短所は給油方法である。小型のオイルタンクが弁装置に直接取り付けてあるが、容量が小さいためにすぐ無くなってしまうようである。そのことも考慮して摩擦の少ない簡易なピストン弁を採用してあるものの蒸気は洩れやすいと思っている。



これは定置型エンジンである。蒸気二つの模型よりも一回り大きなエンジンである。ダミーであるが当時のエンジンの象徴的な機構であるメカニカルガバナーが付けられている。実物は回転する金属球の遠心力を利用して加減弁を制御することで速度を一定に保つための仕掛けである。蓄音機の中にも同じ機構を持っているが、なかなか味のあるからくりである。




4.どんなメカニズム?
 いずれの玩具もボイラーとエンジンを持つエネルギー自己完結の駆動方式である。エネルギー発生装置を持つ機械というのは発電所のように大変複雑なものになるのであるが、模型としてみるとそれがいいのである。(笑)
以上の記述内容で既に今回の蒸気玩具のメカニズムをご理解いただいていると思うのであるが、あらためて各玩具の特徴を並べてみた。

・ロードローラーは、
 エンジンの回転を歯車式クラッチを経由して巨大な車輪を回す仕掛けである。その作りは略せるところは略してコスト削減を図るとともに耐久性の必要な箇所は頑丈な組立を行ってあるので意外に丈夫な構造である。我が家の子供達は赤ん坊時代にこの車両に跨っていたのであるが、それにも耐えて今でも動いてくれるとは驚きの玩具である。
この時期に発電機の姿に仕立ててあるモータも入手しており、弾み車とベルトで結んで電灯を点けるように改造するつもりのままになっている。

・蒸気消防自動車
10年ほど前に到来したのであるが、自動車を動かす機構とともに歯車式ポンプを回転し、水タンク内の水を1.5m程放水できる。もちろんか細い噴射であるが、100年前の蒸気消防自動車のメカニズムを再現しているのは素晴らしいと考える。
中央のレバーは現在中立位置である。左に倒すと金色の鎖で動輪を駆動する。右に倒すと黒い歯車ポンプのギアに繋がって運転席下にある水タンクから水を吸い上げて左側の金環につなげたホースから放水するのである。
消防士人形があれば更に楽しいのであるが。




・定置型エンジン模型
、アルコールの熱源で大きなエンジンを回転させるというエネルギー交換を目で見て楽しむ機械である。ただひたすらせっせと回っている健気な玩具である。もともとは固形燃料で動かしていたようであるが、前オーナーがアルコール焚きに改造したので扱いやすくなっている。
それにしても大きなボイラーなので蒸気発生まで時間がかかってしまう。燃料をアルコールに換装した理由はこの辺にあるかも知れない。 前後進の調整を微妙に調整する作業が残っていたことを思い出した。(汗)


5.燃料は?
 蒸気機関車と違うのは燃料である。玩具であるためには燃料の姿を利用者から隠さなければならないのだろう。この観点から固形燃料を採用しているような気がする。
Esbit という角砂糖か樟脳のようなアルコール系燃料であるが、食べ物と間違えないように注意すべきものである。
取り扱いが簡便なのでいつでも動かす気が起きるのが絶妙である。これからの小型の入門ライブスチームが見習うべき点かも知れない。


6.その他
 日本でもこのような蒸気模型が売り出された時期があったようである。私も中学生の頃デパートの模型売り場で見たことがあったのであるが、いつの間にか消えていた。最近は高級模型として蒸気エンジンを使っているものを見ることもあるのであるが、科学少年に手が出せるような往時のような商品があればいいなと考える。 そもそも科学少年or少女という人種が存在するのかどうかも分からなくなっている最近なのも残念である。







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