クラカメ好きですか


その始まり(ステレオカメラ)

 クラカメマニアに至る遍歴は、その仲間同士で意外にも共通的な部分があるということに気が付いた。自分の周辺でこのところ突然カメラマニアに変身する人が相次ぎ、彼らの遍歴を聞いてみると「これは、いけない」自信を持って後輩に忠告する自信がついたのである。(笑)
既にご理解いただいていると推測するが、鉄道模型、アンプ製作、ラジコン、天文観測、蓄音機、時計・・・・これらの領域に少しでも興味を持ち、その世界に足を踏み入れたことのある方は、まずクラカメファンに転籍しやすいと思われる。
 中古カメラウィルスを発見したのは赤瀬川原平氏とのことであるが、どうやらウイルスを培養する環境はこれらの趣味に遊ぶ心そのもののようである。もう手遅れかもしれないが趣味心を自分の中から排除しない限りこのウィルスが蔓延すること必至である。このウィルスなら歓迎するという方は多いと思うのだが。それはともかく、この文章をここまで読んでおられる方は既に保菌者である可能性が高いと思われるので心からご同情申し上げる次第である。

 1992年初夏、日頃の運動不足解消のためサイクリングや街歩きに燃えていた時期である。ポタリング移動中の電車で読もうと思い、ついつい(本当についついであった)手にした文庫本は、尾辻克彦すなわち赤瀬川原平氏の「カメラが欲しい」であった。この本を手に、ぐるぐる回る山手線で読み始めたのだが、この本の中味は、まるで当時の私の心を代弁するようなカメラへ傾注度である。潜伏期もなく発病したのか五反田で下車、何処かで聞いたことのあったマックカメラを探し当てたのである。
この「カメラが欲しい」で最も興味を覚えたのはステレオ写真であった。ローライのステレオカメラで撮ったと思われるドイツ第三帝国の立体視の薦めが目玉商品なのである。私には才能があったのか(笑)この大変難しいステレオ立体視を即座に会得し、脳内で浮かび上がる立体写真にぞっこん参ってしまった。
 マックカメラで「ステレオカメラはありますか?」と尋ねてしまったのが運の尽き、巻き上げに難有りの米国デービッド&ホワイト社製リアリスト35と革ケース、双眼鏡のようなビューワー、二個あるのでお値打ち感満点のフード・フィルターいずれも元箱が付いていた。それに丸いお椀型の発光器までが付録である。このセットが何と三万五千円というお値打ち品である。
 おまけに私と同い年の昭和22年製造というのも感激である。ビューワーの中には前の持ち主が残したと思われる中南米のピラミッド写真が残ったままである。巻き上げ不調という難点はあるものの、このカメラを目にして「さあ、こいつを手に入れねば男じゃない。」と勢い込んで自分のものとしてしまったのである。後日、この不調を分解修理したことで修理にのめり込むというきっかけとともに、修理の顛末を既に廃止されてしまったアスキーネットに書いたことでカメラの博学者で私の師匠となったO氏の知遇を得ることになったという記念すべき第一号カメラである。
 
さて、ステレオカメラを手にしたまでは良いのであるが、当然のことながら高輪台のマックは中古舶来カメラ店である。見たことも聞いたこともないカメラが山の如く陳列されている。この世にはこれほどまで多種多様なカメラが存在するのかと驚愕させられてしまった。
 著名なライカは当然のことながらコンタックス、ローライフレックス・・・ 並ぶは、並ぶは、当時の貧弱な知識で判断しても圧倒されるカメラ群である。この光景を目にしてなければ恐らく今の私はなかったと思っている。これが、今に続く煩悩の道への第一歩であったのである。これが果たして良かったのかどうか、思い出す度にため息が・・・・・あーあー(笑)







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