からくり日記

1995年08月26日

エジソンバンド

 祖母に連れられて近所に住む遠縁のお婆さんの家に遊びに行くと、一回り上のお兄ちゃんがいて、よく遊んでくれました。
アルミの鉛筆キャップ・ロケットを教えてくれたのもこのお兄ちゃんです。
このお兄ちゃんの持ち物でいつも気になっていたのは、彼が頭に巻く銀色の異様な鉢巻きです。『これなーに?』と聞きますと『頭のよくなる器械だよ。』という返事です。
 蜂の巣状に穴の開いた銀色の鉢巻きはどう見たって異様で、宇宙からの信号を受けて頭が良くなるのではないのかなと思っておりました。
これが、エジソンバンドというものだと少年雑誌の広告で知るまでにはまだ数年ありましたが、仕掛けは、コロンブスの卵的な単純なものです。アルミ片を組み合わせてキャタピラ状とし、その一片毎にフィンを付けてあります。履帯ですから頭部に合わせて自然に曲がり、金属部が頭に直接当たるので頭脳に籠もる熱を放散してくれるわけです。頭の熱を冷ますと何故頭脳の働きに良いかはっきりしませんが、頭がいつも涼しく感じ眠気を催さないからではないでしょうか。
 「男はつらいよ」で渥見清扮する車寅次郎が、浪人生の甥っ子に頭の良くなる器械と称してエジソンバンドをお土産に持って帰るシーンがありました。余談ですが、この映画は、私の生まれ故郷の佐賀県を舞台にしており、田圃に点在するクリークの描写が懐かしくて、興味深く見てしまいました
 そう言えば、47歳ともなると頭の毛が薄くなり今年のような暑さでは頭に汗がしたたり落ちます。髪がふさふさしていた昔には、こういったことを感じませんでしたが、髪の毛が少なくなると放熱効果が激減したのでしょう。空冷エンジンのシリンダ・フィンにアルミの洗濯鋏をずらりと付けて走りまわっていたバイクをご存じかと思いますが、これも同じ原理ですね。エジソンバンドの効果が頭を良くするのであれば、年とともにぬけ落ちる髪の毛が頭脳の働きを衰えさす一因であるのもむべなるかなです。
頭が薄くなり上司からのプレッシャで悩んでいる年輩者に大受けする商品かもしれません。(1995.8.26)







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