| セルロイドというものがかって盛んに使われていたことをご存じだろうか。成分は、セルロースつまり植物の細胞膜を加工して作ったプラスチックの一種で発火性が強く子供が扱うには危険すぎる材料であった。 セルロイドを中学時代の理科部在籍中に脱脂綿、ナフタリン、名前を失念した溶剤で作ってみたことがある。ところが、実験は失敗し、セルロイドどころか火薬状態のものが出来てしまった。綿火薬もこの工程と類似のやり方で作るんだよと当時の顧問のA先生から教わったことがある。 話を昭和30年代前半に戻すと、この時代には、石油時代の申し子である現在のプラスチックに相当するものは殆ど存在せず、万年筆のエボナイトが合成樹脂の代表であった。安価な玩具や文房具にはセルロイドが重宝されてあらゆる製品として出まわっていた。今思うと空恐ろしい感がする。 身近な物で言えば、筆箱、下敷き、人形類は百%セルロイドではなかっただろうか。筆箱に凸レンズで太陽光線を集めてみたら突然燃え上がり危うくやけどをする経験をしている。兎に角、一瞬のうちに爆発的に燃え上がるのである。このような経験は未だもって親に話したことがない。(笑) ところが頭の良い我々悪餓鬼どもは、この性質を逆手にとって思わぬ伝統的玩具にしてしまっていた。この材料は、アルミ製の鉛筆キャップと下敷きであるといえば、当時小学生だった人は、殆どがあの遊びだなと思い当たることであろう。エジソンバンドのお兄ちゃんが指導し、近所の子供達が集まって発射実験を繰り返していた。この実験についても親どもは全く知らなかったと思う。 では、文化的遺産の継承と言うことでその遊びを再現することとしよう。
<準備するもの> アルミの鉛筆キャップ(プレス製造。切り込みのある鉄製は不可) 五ミリ角に切ったセルロイドの下敷き ロウソク マッチ ペンチ <製造・運用方法> 1.セルロイド片をキャップに入れ、ペンチでお尻をふさ塞ぐ。 この時強からず弱からず締めること。これが企業秘密である。強すぎると飛ぶ方向が定ま らず大変危険である。弱ければ飛ぶ前からガス漏れを起こし小便弾になる。 2.適当なパイプで発射台を作る。 出来上がったロケットを発射台に載せ、お尻付近をロウソクであぶる。 3.二、三分でお尻から白煙を出してロケットは何処へともなく飛んで行く。
機体材料となったプレスで作ったシームレス鉛筆キャップとセルロイドは、2B弾とともに文房具屋の店頭からロケットと同様に飛び去ってしまい、今では再現モデルを作ることは極めて困難になっている。お薦めすべき遊びではないから結構なことである。(1995.9.5) |
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