| 小学校の理科室、それは科学の神秘に満ちている場所であった。現在と異なりおよそ科学工業製品に縁のなかった昭和30年代の子供達にとって、日本、いや世界の科学と技術が集合した場所が理科室であったのである。ずらりと並んだ薬品、白骨の模型と人体模型(何故か生殖器が省略されており不思議でならなかった。)魚貝類から哺乳類までのさまざまな化石、鉱石・宝石見本、キューリ夫人やノーベルを思い起こさせるガラスの実験器具、自動車や蒸気機関車のエンジンのカットモデル。大きなレオスタットと電池類、電話の模型もあった。もっともっとあったと思うが、いずれも子供心に宝物に見えてしまうものばかりで、いずれはこれらのどれかを取り扱えるようになりたいと思った。 興味をそそるものは、学校の年次が上がるにつれて変わっていったと思う。現在ではほとんど興味を感じなくなったが、化石、鉱物標本の類、化学実験材料と薬品、人体に関するもの、植物標本、天文なども一時期すごく熱を上げた。 当時から変わらず興味を引くのは、機械、電気器具類ではないだろうか。蒸気機関、自動車、歯車、電子回路等々は、相変わらず気になって仕方ない。機械仕掛けと聞くとなんだか興奮してしまう。理科室の宝物のような機械類が私の心を常人とは違う方向へと育んでくれたのであろうか。重荷でもあり宝物でもあり、複雑な心境である。(1995.12.14) |
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