クラカメ好きですか


バルナックの話 (2002.1.2)

 そういえば、肝心のバルナックのことを全く書いておりませんでした。
 このシリーズは、自分の気に入ったカメラを徹底的に持ち上げるという企画でありますが、あまりにも身近に存在する大好きカメラなので紹介することをすっかり忘れておりました。
 昨年の夏休み終盤に1型から2型へ改造された黒のバルナックのハーフミラーを交換し新品同様のファインダーに仕上げました。「やっと今年の修理第一号だ、これで普段の修理生活に戻ることが出来る。」とつぶやいたものの、修理後間もなくシャッターの褌の紐、つまりシャッター幕を引っ張っている紐が突然切れてしまったのです。幕の金具と紐をつないだ縫い目部分の破損です。どうやら縫い糸が疲れていたようです。組み立ての際に丁寧に各部点検をやっておけばよかったのですけど危険予知能力がすっかり鈍ってしまい悲嘆に暮れています。(汗)
 これは、慢心への仏罰に違いないと考えて、修理エネルギーの充電モードに生活を改めたものの、放電時間が長過ぎたので満タンになるには時間が必要のようです。

 反省の辞はさておき、黒のバルナックはこれが初めてでした。
戦前の塗装がこれほどしっかりしているとは思いませんでした。しかも、文字は銀の象眼なんですね。寄る年波でさすがに半分ほど剥げかけていますけど太い「Leica」の文字はしっかり残っています。これを見ただけで当時のカメラのお宝度が分かるというものです。なるほど塗装ライカは戦前ものであるということをこのカメラで実感しました。


 この2型は昭和5年頃のものですから70年健在だったわけです。
本体内には何度も修理された形跡がありましたが、この長い年月動いてきたというのは驚異です。
 クラシックカメラのめり込んでしまうようになったった原因の一つが分解修理です。
今回のように直感で修理可能と判断した個体を入手し、修復後世の中に送り出すということがいつの間にか趣味の一つになりました。しかしながら、この直感なるものは怪しいもので、未だにかなりの数のカメラが修理待ちまたは修理不能で転がっています。
 とはいえバルナックは、まずまずの成果を上げているカメラです。その理由は、機構が単純であること、高価なカメラだったので大切に扱われていたのか痛んでいる場合が少ないことです。
私の経験では、輸入された個体は、道具としてラフに使われたせいなのか年相応に磨耗しているものが多いようです。一方国内で流通したらしいカメラは総じて綺麗なものが多いようです。大切に保管され過ぎて潤滑油が固着している例に何回か遭遇しました。

 私のホームページを見たという会社の先輩からバルナックIIIfのファインダー清掃を9月に依頼されてしまいました。昨秋11月の連休に3ヶ月ぶりに着手しました。2,3時間程度の作業ですけどなかなか取り組む気力が出ませんでしたが、何とか終わらせることができました。どうやら修理の勘が戻ってきました。
 人様のものを分解掃除するのは手の震える思いでしたが、年末というタイムリミットが近づいたのでやっと御輿をあげました。(汗)
不思議なことに、この個体は、軍艦部とボディシェルを結合するための前後2本のメッキネジがありません。一瞬、分解方法が異なるのかなと思いました。巻き上げノブ下の2個のネジと巻き戻しノブ裏のネジ1個で軍艦部を固定していました。
後期型のバルナックでは、前後4個のネジが省略されていることに分解して気が付きました。手持ちをのカメラを見直したところ、確かにIIIf後期型、IIIGでは、ネジがありません。この差異に気づいたのは、修理の効用であります。(汗) 
 ところで、最初に入手したバルナックは、恐る恐る手を出した昭和22年製のIIIC+Elmer5cm/f3.5でした。
 −> 恐る恐る買うというのは大抵安物です。 
 −> 安物はまず問題を抱えています。
という単純な論理を分かっていなかったものですから、内部は赤錆、レンズ枠は歪みというものを買ってしまいました。綺麗にするつもりで触ってはいけないネジを回してしまったからたまりません。ナットが中に落ちみ、無謀にも分解せざるを得ないこととなりました。苦戦の末、幸運にも快調なカメラにすることができました。この成果が底なしのバルナック沼に引きずり込まれる一歩になったのでした。

 手元にあるバルナックを見渡すといつの間にか各時代のものが集合してしまいました。色々と出入りがありましたが、昭和初期の黒DII、クロームDIII、IIIa、戦中のIIIb、戦後のIIIc、IIIfR/D、最終型のIIIg。更にはライカコピーのニッカ3Sが居るようです。(笑)
 この道に入り、気が付いてみたら昭和5年頃から昭和30年代までのオールドライカに集合場所を提供していたわけです。居心地が良いのか10年来座り込んだものから、ちょっとの間の家出寸前のものなど様々ですが、いずれのバルナック顔にも何がしかの擦り傷や切り傷を持ち様々な人生を経験してきた渋い顔立ちをしています。望んでも分かるはずはありませんが、このカメラ達の辿ってきた人生には途方もないことがあったんだろうなと想像すると捨てがたい魅力を感じます。
 ところで、カメラの上部を軍艦部と呼びますが、この由来は距離計付きバルナックを見てもらうと分かります。直線と半円を組み合わせた船のようなボディの上に、このカメラの命である距離計とともに巻き戻しとシャッターの両ダイアルを配置した姿はまるで往時の軍艦の上部構造物です。距離計付きバルナックライカを見た人が「あっ、これは軍艦とそっくりだ。」と思い、上部を軍艦部と言い出したという噂も嘘ではなさそうです。
軍艦は次第に楼閣を高くして時代とともに滅び去り、イージス艦のようなノッペラボーな姿になりました。カメラも同様にノッペラボーなものやグニャグニャと得体の知れない姿態のものが多くなったような気がします。
 バルナックと往時の軍艦の姿は、思想を越えた機能美の世界であると思います。
軍艦はいざ知らずバルナック型ライカは、写真を撮るということかけては一流であるということが伝わってくる容姿だと確信していますが、みなさん方はいかがお考えでしょうか。

 ちなみに私の使用頻度がもっとも高いのは昭和10年製のIIIaです。
ストロボ接点が素人工事で追加してありますが、これがまた実用性に富んでおります。最近は、スクリューマウント用ビゾフレックスを付け小型一眼レフとして活用しています。

  絶好調のIIIaエルマー9cm/f4のヘッド部を装着

しかしながらこのところ問題が発生しています。コシナの存在です。
ベッサLは、まだ大目に見ることが出来ましたが、ベッサRバルナックを越えたような気がしました。ベッサTでこれは負けたかと思いました。
今回の色つきベッサT、これはいけません。バルナックを越えましたね。
トリガーを付けるとピストル付きのIIIbといい勝負です。でも、軍艦部がプラスチックなのでまだライカが勝っていますね。(笑)
軍艦部が金属のベッサRが出ると負けそうですけどやはりバルナックはカメラの大師匠だと思います。
何といってもバルナック型ライカは不滅であります。(笑)
(2002.1.2)







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