思い浮かぶことども
暑くもなく寒くもない気候になりました。花粉をのぞけばこの上ない行楽の季節です。が、それとともに眠気を催す時期です。布団から出たくないこの頃です。 この季節にはいつも「春眠暁を覚えず」という高校の漢文で教わった詩が浮かびます。 あらためてこの詩を眺めると青春時代のいろいろなことが何故か連想されます。 この詩のみならず短い漢字の中には様々な思いが詰め込まれているような気がして漢詩には捨てがたいものがあります。 が、その漢文もあまり熱心に教えられていないと聞いて残念だなぁーと思います。久しぶりに漢詩を話題にしてみました。
古い本をめくるとありました。「春眠暁を覚えず」が・・・・・ 「春暁」というのが原題でした。
春暁 唐・孟浩然(もうこうねん)(689〜740)
春眠不覺暁 (春眠暁を覚えず) 處處聞啼鳥 (處處啼鳥を聞く) 夜来風雨聲 (夜来風雨の声) 花落知多少 (花落つること知る多少)
この漢詩は入門編として「試験に出すぞーっ」とおどされながら覚えました。眠たくて仕方のない我々生徒に向かって、「反面教師の詩である。」と云われていたので居眠り防止の詩のようなイメージがあります。その先生も昨年末に逝去されました。 ところがこの詩を軽妙に翻訳したものがあるのです。ご存じの方も多いと思いますが、これを思い出したのでご紹介いたします。 井伏鱒二氏の厄除け詩集ではこのような詩に変貌して載っているのです。
ハルノネザメノウツツデ聞ケバ トリノナクネデ目ガサメマシタ ヨルノアラシニ雨マジリ 散ッタ木ノ花イカホドバカリ 「厄除け詩集」より
この軽妙さ、小難しい漢字を並べるよりももとの詩の雰囲気を何とまあ良くあらわしていることでしょう。とても私には出来ることではありません。井伏鱒二さんの名人芸に脱帽です。 漢文、更には日本語を極めているからこそ出来ることだと思います。このような翻訳と対で教わるのであれば漢詩も更に楽しくなりそうです。 この詩集には更にいろいろな漢詩の日本語翻訳が載っており感心させられました。 その翻訳の中でもう一つ気に入ったものを紹介いたしますが、これは季節柄地元の先輩である酔考さんに捧げる詩かも知れません。ハイ(笑)
勧酒 唐・于武陵(うぶりょう)(810〜?)
勧君金屈巵 (君に勧む金屈巵(きんくつし)) 満酌不須辭 (満酌辞するを須(もち)いず ) 花發多風雨 (花発(ひら)けば風雨多し) 人生足別離 (人生別離足る)
コノサカヅキヲ受ケテクレ ドウゾナミナミツガシテオクレ ハナニアラシノタトエモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ 「厄除け詩集」より
実際は更にどろどろと盛り上がって飲むような気がします。いよいよ花見の季節です。花冷えとか云ってこの季節が終わるまでコートは手放せません。風邪引かないように楽しい花見をやりましょう。 酔考先輩、お互いに飲みすぎには注意いたしましょう。(笑) |
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