からくり鐡道の機関庫

2002.9.21製作・45mmLNWR JUMBO (除籍)


 初めての英国型ライブです。いや、ライブどころかHOやNゲージですら扱ったことのなかった英国型に手を出したのはオークションのせいです。新品組み立てキットが格安で出ていたので飛びつきました。なるほど、英国型マニアが数多いるはずです。磨き立てられピカピカしている艶あり塗装、おまけに色とりどりあるんですね。米国型や日本型では味合うことの出来ない雰囲気を醸し出す車体です。今回は黒の車体でしたけど赤の細線や動輪を包むエンブレムが大英帝国の自信を示しているように感じました。

      <第一動輪カバーに描かれたエンブレム>

 エンジンを車体の内側に隠して軽やかさを表現しているようです。何故この様な設計を採用したのか勉強したことはありませんが、その理由を探ると面白そうだなと思っています。弁方式は、実物と異なりスリップ・エキセントリックを採用してあります。模型の場合この狭い空間に弁制御機構を組み込むのは大変なので簡便なこの方式になったのかなと推測しています。つまり、前に押すと前進、後ろに押せば後進という初歩的な蒸気模型で採用されている弁方式です。運転だけを考えると大変扱いやすい方式ではないかと思います。私のホームページで紹介したティームトラクションエンジン模型蒸気消防自動車も同等の弁装置を使っています。昔保有していたアスターのJNR・C12はこの弁の機構を更に実物らしく見せるリターン・クランク弁でした。

 <第一動輪のクランクを写す。左の砲金ブロックがシリンダー>

この機関車の実物は、LNWR(London North Western Railway)で黙々とハードワークをこなしたのでスワヒリ語で象の意味であるJUMBOというニックネームが付けられたとアスターのカタログにあります。
 この機関車をライブとして観察すると新しい方式です。ボイラー形式がCタイプです。英国のJ.T.ヴァン・リムスティックという人が考案した模型蒸気機関車向けボイラーだそうです。小煙管5本付き丸ボイラに板金で組み上げた火室を装着します。アルコールバーナーの火はボイラーの丸底を熱し、排気に引かれてボイラーの端面から煙管に入り内部の水を加熱しながら煙突から蒸気とともに排出されるはずです。実際にアルコールを点火するとどのような燃焼をするのか楽しみです。
 機関車の制御は、スリップエキセントリック方式のため弁調整が要りません。従って停止時に通風弁の開閉操作と運転時には注水バルブと加減弁の調節なので簡単そうです。運転席はご覧の通りシンプルな構成です。水位計が無いことに作成途中で気付きました。軸動ポンプの作動状況に十分注意しなければいけないようです。アルコール釜なので壊滅することはありませんけど。
左から加減弁、通風弁、圧力計です。

    <シンプルな運転室。外部にむき出しです。
        手前の黒い板の裏が火室になっています>

 この様にシンプルな機関車ですが、組立時にはトラブルが続きなかなか完成させることができませんでした。
 一番目は潤滑油タンク細管の溶接部からの漏れでした。これはアスターで親切に対応してもらい交換できました。
 二番目はボイラーからの漏れです。組立に自信があったにもかかわらず微かな漏れにより圧力が下がってしまいます。これには悩みました。結局組み立てたボイラーを再分解してテストしたものの原因不明。溶接ミスかという推測が外れて悩みました。
しかしながら、分かってしまえば単純ミスです。蒸気溜の取り付けを安全弁と同様のねじ込みだと早合点したのが間違いで、蒸気溜はシーリング材で固定しなければならなかったのです。溜め側のねじ切りも浅く、ねじ込みだけで完全に塞げないことも分かったので専用ワッシャーを重ねて厚みを増して万全を期しました。
 最後の問題は、水圧ポンプの詰まりです。圧搾空気をテンダーの注水経路を利用して送り込んでもボイラーに入りません。これはシーリング材の詰まりかと推測して分解しましたが、全く問題なしです。不通の原因は、何とポンプの部品を左右取り違えたことによることが判明しました。完成を急ぐあまりの単純ミスでした。
急がば回れ、これがライブ組立の大原則であることを今更ながら思い知らされました。
ガツガツと組立を急いだ報いであると大いに反省しました。
 再組立後、圧搾空気で丹念に慣らし運転を続けました。圧縮機が3kg/cm2までしか上がらないのでボイラー圧は2.7kg/cm2程度です。この状態で加減弁を開くと小気味よい音を立てながら動輪が回転します。潤滑油も霧状に噴き出しているようなので蒸気で運転しても支障なさそうです。これで開発工程は無事終了したようです。やれやれ、長い道のりでありました。(2002.9.21)

<LNWR JUMBOの仕様>
縮尺・軌間:1/32・45mm(1番ゲージ)  総重量:2.6kg(Engine1.7kg+Tender0.9kg)
最大長:457mm(with Tender)       最大幅:74mm
最大高:125mm
車輪配列:2-4-0 動輪直径63mm
シリンダー:砲金製2シリンダー、ボア10mmXストローク20mm
弁装置:Slip Eccentric (スリップエキセントリック)式
     トラベル4mm、cut-off75%
給油装置:ロスコー式
ボイラ形式:Cタイプ式、煙管小5本、スーパーヒーター1本
  燃焼装置:2筒アルコールバーナー   運転圧力:3.5kg/cm2
  缶水容量:80ml(70%水位)
ボイラ付属品
  安全弁1、加減弁、通風弁、バイパス弁
  圧力計、給水逆止弁
燃料:アルコール(容量65cc)
炭水車:水容量160ml
給水ポンプ
  手動式:ボア10mmxストローク16mm
  車軸駆動式:ボア5mmxストローク5mm
最小通過直径:1m





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