| 初めて目にしたときは仰天した。丸い胴体に煙突、大きな前後の平らな車輪。前は車幅一杯であり、後輪は人の高さほどある三輪車なのである。どうやら道路工事で使うロードローラーらしいのである。胴体の上の大きなはずみ車や蒸気エンジンらしきものを見ると、その昔、農家にあった石油式発動機のお化けのようでもある。 別の写真は、刻みの入った車輪の四輪車であり、胴体の下にはウインチらしき装置を持ち、鍬のような物体を引いているので農耕用のトラクターであろう。極めつけは電球を満艦飾に飾り立て車輌全体がきらきら輝く花電車みたいなものもある。煙突の前で「はずみ車」からベルトドライブされているのが発電機であろう。この車は、サーカスの檻を引いている。 それにしてもあの汽車のような煙突は何だろう。蒸気自動車として教わったものにはこんな奇妙な種族はいなかったはずである。 これらを見たのは、英国の蒸気機関に関する雑誌の上でのことであり、「スティーム・トラクション・エンジン」という呼び名であった。名前の通り蒸気駆動の牽引用機械とでもいうのであろうか。 昭和48年頃、sea&skyという模型雑誌上でこの機械のライブモデルに出会った。今は無きこの雑誌の編集部に問い合わせると、「これらの模型は、横浜の和田模型店が扱っているので問い合わせ下さい。」とのことである。実は、これが、ライブスティームとの初邂逅であった。 この和田模型店は、その後和田ワークスという本格的な模型製作所に発展しており、ものの本でよくご主人をお見かけする。このご主人とは、後年ライブスティーム倶楽部で偶然ご一緒することとなり、細々ながらも、現在も繋がっているのである。 早速横浜の和田模型店を訪問すると購買力のない客にも関わらず親切に対応してもらった。ステーショナリエンジン、ロードローラ等々を仕掛けを丁寧に説明を受けたのである。 実は、蒸気機関の動作原理を正確に理解していなかったのであるが、この時にやっと分かったので、和田さんはライブの恩人である。(笑) さて、目的のロードローラは残念ながら和田さんのお店には在庫していなかったので首振り(オシレーティング)エンジンのステーショナリ・モデルを求めて帰ったのである。その後、ロードローラを偶然にも東急デパート本店で発見し大蔵大臣に三拝四拝して求めたのであるが、新婚間もなかった我が家では予定外の出費だったのでロードローラーを見るたびに家内から今でもそのころの生活の苦しさを愚痴られ頭が上がらないのである。 この時から既に30年近く経過したのであるが、幼かった子供に跨られたり、ブリキの玩具代わりに遊ばれてきたロードローラであるにも関わらず、独逸製のこの模型はびくともせず、今なお健在である。
 それでは。この模型の素晴らしさを紹介しよう。 まず何と言っても、本当の蒸気で動くことである。しかもエンジンは首振りではなく、本物の汽車と同じダブルアクションである。通常の蒸気エンジンよりもかなり低圧で動作するため、ボイラーの端面はガラス張りである。従ってボイラー内で水の沸騰する様を見ることが出来るのである。これは見ようと思っても出来ることではない異次元の光景である。 動力伝達機構は、ピストンの往復運動をはずみ車のエネルギーに変換し、簡単なクラッチ機構で大きな車輪に伝えている。クラッチを切ると蒸気エンジンの動く様を堪能できる。 固形燃料と水と潤滑油で動くので基本的には屋外用の玩具であるが、子細に眺めると室内でも遊べる工夫が施してある。エンジン下部の歩み板にはオイル受けがあり、排気は、煙突から出す際に、煙突の根元(煙室)に蒸結水とオイルを溜めているため蒸気機関車の模型のように水や油を床の上にまき散らすことがない。換気に注意すれば大人が遊べる玩具である。方向制御は、本物と同じ鎖を用いた仕掛けのハンドルで行うのである。 固形燃料に着火後5分程度で蒸気が上がるが、運転準備の水注入、潤滑油補充等の一連の操作はライブの運転と殆ど変わらない。蒸気が上がるとギアで減速されているため、のんびりした動作で20分程度動き回ってくれる。加減弁をぎりぎりまで絞るとスローモーションの如くゆっくりした速度でピストンが動作する。爆発的燃焼で動作する内燃機関には絶対に真似の出来ない素敵な芸当である。こんな模型が、1.9万円で手に入ったのである。ただし、30年近い昔の話であるが。(笑)
 ごく最近、7万近い価格で売られているのをガーデニング雑誌で目撃した。中でも、気になるのは蒸気消防車である。蒸気エンジンで動くのは当然であるが、クラッチの切り替えでポンプを駆動し、放水機能まで持っているのである。この車の10万という値に永遠に悩みそうである。 このようなモノに興味ある同志の方々のご連絡を待ちたい。(笑) (2001.7.20) |
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