クラカメ好きですか


ニコンS型への憧憬 (2003.7.20)

 中学3年の担任O先生は、若い頃は剣道で慣らし天覧試合にも出場したという方です。しかしながら先生の印象は、カメラ好きの、それも滅多に見ることのないニコンの高級カメラを駆使する快活な先生でした。先生の言動よりもそのカメラを通して先生や友人の顔が浮かぶのだから不思議なものです。
理科クラブのA先生は、当時流行り始めた一眼レフ・アサヒペンタックスに様々なアダプターを付けて顕微鏡写真やら実験の記録を撮られていました。この先生も学生時代は空手の猛者だったというのだから人は見かけによりません。そういえばカンボジアで亡くなった一ノ瀬泰造君と大掃除の時間に廊下で雑巾の投げ合いをしているところをA先生に捕まり、両名とも大きな平手で格別に痛い往復ビンタと廊下に正座の罰をいただきました。(苦笑)
 高級カメラへ話を戻しますと、このニコンが一体何型だったのか未だに謎は解けておりません。南九州への修学旅行や授業の合間に撮ってもらったモノクロや当時珍しいカラー写真が残っていますが、その時代に写された他の写真とは一線を画す鮮鋭さです。思えば、このシャープな写真に憧れてカメラを渡り歩いた気がしますが、同じ印象の写真を撮ることが出来たのはクラシックカメラにはまってからでした。何とソ連のカメラkiev(キエフ)4型で写した写真がよく似た雰囲気を持っていました。どうやら私の記憶にはContaxUSSR・CONTAX(kiev)ニコという系譜の鮮鋭さが長い間残っていたものと思います。
 さて、このニコンS型の謎を記憶をもとに推理すると、「縁側で手入れをしている際に太陽にレンズを向けたとみえてシャッター幕に穴が開けてしまい修理することになったけどこんなことが起きないように金属幕に交換したからもう大丈夫だよ。」と話してもらったことがあります。
ということは、ニコンでチタン幕交換を受け付けていたSPS3が先生のカメラのようです。銀色のボディに黒いレンズ。レンズの根元がくびれているという独特のスタイルを今でも思い出せるのですが、ファインダーの形状はモザイクがかかったままです。これ以上の結論を出すのは困難なようです。
先生のカメラの印象は、数十年間記憶の奥底で醸成されていたのですが、どういうことか一昨年蔵出しされて自前S型の実現となってしまいました。更にはニコンS型は、素晴らしい日本の技術資産であることを認識させてくれました。
 S型の感想を手元にあるモノを眺めながら簡単にまとめてみました。
レンズグルメは?いえいえ感性の低い私には論ずる資格はありませんので、ここはからくり論議で頑張ってみます。(汗)
当HPにあるS型レンズの作品は、からくり探訪旅行にある新春の富士のみかもしれません。10.5cm/f2.5のシャープさに驚きました。

S2

 S型の基本機能はほぼ完成されており、明るい等倍ファインダーは両眼を使った撮影に大変便利です。気になると云えばそのブレーキ機構のためにシャッター終了時の音が大きいことです。撮り終わった瞬間にパコンと云うような感触を受けてしまいます。複数台のS2を使ってみましたが、いずれも同じ印象です。この感覚が元気を与えてくれるような気がします。元気出せの激励カメラです。後述のカメラが高価になり過ぎてしまい散歩カメラとして躊躇する場合もありますが、S2は気軽に持ち出る愛犬のようなカメラです。もっと撮れ撮れと甘えてきますのでどんどん使ってあげようと思っています。

SP

 S2よりやや暗めでアンバー調ながら落ち着いた見え方のファインダーです。覗き込んだ途端気に入ってしまう人が多いようです。50,85,105,135mmのフレームは手動で表示します。135mmを装着した場合は大変賑やかなファインダーになります。
シャッターが改善されたのでS2よりも更に静かな音です。この機構はニコンFに引き継がれたと聞いています。
一昨年、チタン幕、布幕と入手しましたが、いずれもメンテナンス小林の名人芸でオーバーホールしてもらいました。布幕は少し黴が来ていたので交換しオリジナルの幕は、はなぜか保管しています。布幕の方がチタン幕の個体よりシャッター音は、やや静かに感じます。ニコンF発売以降SPにも採用されたチタン幕ではバネの強さが布幕よりも強いせいかも知れません。唯一の欠点は28mmまで対応した広角用ファインダーです。この箇所はメンテするのが極めて困難のようで簡単清掃で止めてもらったので汚れたままになっています。とはいえ、F3と同じように使えば使うほど撮影したい気力の湧き出す後世に名を残す世界的名カメラだと思います。

S3

 SPの普及版的存在です。2000年記念モデルとして新たに作成されたことをご存じの方も多いと思います。ファインダーはSPの複雑な機構から離れて、ハーフミラーを使ってフレームを表示するアルバダ式を採用して簡素化してあります。35mmレンズに対応した等倍ファインダーは広々とした見え方ですが、アルバダ式が災いして眼鏡を掛けている私にはギラギラ感があってちょっと使いづらい場合があります。このカメラもメンテナンス小林でオーバーホールしてもらいました。丁度そのころ真空蒸着釜を導入したとのことでしたので上記SPとともにファインダーブロックの再蒸着をお願いし、往時と同様の見え方にしました。このギラギラ感は蒸着のせいか思って修理の腕を疑った(失礼)のですが、その後、新品のミレニアムS3を手にしてみると全く同様のギラギラ感でした。ということは古いS3を新品同様に蘇らせてくれていたわけです。こんなに良くなるんだったら買わなくても良かったかなと鬱になりそうです。(苦笑)
勿体ないことにSPに比べ今一つ出番の少ない状態になっています。

というように各カメラを褒め称えてしまいましたけど、この数ヶ月、ニッコール35mm/f2.5を常用にしたコシナR2Sの出番が増えてしまいました。Lマウント、ニコノス用も作られている銘レンズです。みすぼらしい容姿からは想像できない鮮鋭な結果を得ることができます。意外性の高いニコンのレンズ群を更に使い込まなければと思います(2003.7.20)







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