からくり日記

2003年12月03日

伯父の電動野球盤

 12月1日の早暁、母方の伯父の突然の訃報に接しました。急遽、九州へ葬儀に出かけて先ほど帰ってきたところです。この伯父は戦前には住友工業の技術者でプロペラの設計をやっていたと聞いていました。それはともかく色々なものを創意考案するのが好きだったので我々子供達からは尊敬のまなざしを持って見られておりました。亡くなった伯父の想い出になってしまいますが、8年ほど前に書いていた文章を載せ、冥福を祈りたいと思います。
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 今年、七十八歳になる伯父が三十年ほど前に凝りに凝ったのが野球盤であった。
六〇センチ程度の立方体に野球好きの伯父のノウハウが機械仕掛けとして詰まっている。外から見ると何の変哲もない箱だが蓋を開けると野球場が現れる。各守備位置にはパチンコ玉が落ちる大きさの穴があり、ピッチャーマウンドにはボールを打ち出す仕掛けとバッターボックスには箱の外から操作するバットが付いている。
バックスクリーンの位置には機械が判定した結果を表示する電光掲示板が付いてた。ピッチャーから投げ出すパチンコ玉をタイミング良く打つと野球場のどこかの穴に吸い込まれる。するとガラガラとモータの回転音がして電光掲示板が点滅し打って穴に入った球に対する結果判定がでるのだ。この結果が大変楽しみで一喜一憂した覚えがある。
実際の野球の確率で打った玉の結果を決めていくものでアイデアとしては素晴らしく、大変楽しめるものであった。今のパソコンゲームの様に仮想的なものではなく、実際にバットを動かして球を打ちゲームを進めるので臨場感のあるものであった。
が、問題は、機械的な機構のため加工精度が悪いと球が詰まる、ドラムの接点が接触不良で結果が出ない、白熱ミニランプが切れるという事象が日常茶飯事発生であり、製品化するには抜本的な改良が必要であった。これらのアイデアを特許にするために努力していたと後日聞いたのであるが、今思うと部分的な方式を特許化しておけば良かったのではないかと感じる。
例えば、モータドラムを回転させてある確率で打者の結果を決める機構、これなら他のゲームにも応用できた。金属球の通過を電気的に確実にとら捉える方法、ランプ切れの検出方法或いは発光ダイオードの応用等分離して申請すれば面白い結果となっていたかも知れない。野球ゲーム盤の電気化の方式特許ということにとらわれ過ぎて何も得るものがなかったようである。結構楽しめた野球盤だったのに残念である。当時、小学生だった私にはそこまでの判断能力とアイデアがあるがあるべくもなく、ただ、小学時代の楽しい思い出の一つとなっている。その野球盤が結局どうなったかは知らない。(1995.10.7)







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