| 思えば二年前の年末、OTOMENさんやkonsoさんらと秘蔵のレンズの修理のために北新宿の山崎光学の山崎社長を訪問しておりました。この時お願いしたレンズが昭和10年頃のSummar 50mm/f2と昭和20年代後半のSマウントのニッコール85mm/f2の二つでした。カメラに血相を変えていた頃は寝ても覚めてもレンズのことを考えていたかも知れませんが、この数年仕事に負けてしまい半分忘れかけておりました。くだんの友人達からも山崎さんの修理は年単位だから焦らずにいた方がいいよといわれていたものですからまず初年度は失念状態でした。
最近人生を見直したくなることが続き、ふとこれらのレンズが恋しくなってしまいました。長いご無沙汰を気にしながら恐る恐る山崎光学へ問い合わせをしました。「はい、綺麗に仕上がってますよ。前玉にあった傷も全くなくなりましたよ。いつでもおいで下さい」というありがたいお答えです。実は、Summarは当時のコーティングが大変柔らかくて傷のないレンズを発見するのは稀だというのは仲間内での常識でした。このことからレンズの能力を１００％引き出すことができないために駄目レンズと酷評されることが多かったようです。確かにこのレンズを入手したままで使っていた頃には逆光に極めて弱く、ちょっとした光にフレアが出たり、コントラストが低かったりでいい結果は少なかったと思います。ただ、順光やストロボで撮った時に意外にいい結果を得ることが出来ました。
山崎さんはこのレンズの非凡さを前からよくご存じで、近時のコーティングを施すと本来の性能を発揮するはずだと考えておられたようです。ライカフィーバーが起こりレンズグルメの皆さんが山崎さんのところでコーティングをしたSummarを使って愕然としたという逸話が残っているようです。
山崎光学でだったか修理前後の違いを実写で拝見したことがありますが、これならば私も楽しみだという際だった差でした。手元に戻ってきた今、早速使ってみようと思っています。
ニッコール85mm/f2は、前玉が一点深く傷が付いておりました。この傷の故に新宿ドイに捨て値で並べられているという不幸な玉でした。一瞬迷いましたが金欠病用レンズだという理由でゲットしたという曰く付きのレンズです。傷に墨を入れて使おうと思ったものの外見は大変綺麗なレンズだったのでOTOMENさんに相談したところ、「山崎さんに持っていくべきである。」というご託宣をいただいたので２年前の今頃持ち込んだ次第です。
山崎さんは、傷を見るなり「あ、治りますよ、。綺麗になりますから心配しないでください。預かりましょう。こんな玉を見つけたら心配せずに持っておいでなさい。いいレンズですよ。」とにこやかに診断してくれました。ついでにSummarを診てもらうと「これはコーティングをして現代でも通用するものにしたらどうですか。」とのことでしたので合わせてお願いすることにしました。
これらのレンズが２年を経て今日手元に戻り大変気持ちいい一日となりました。
久しぶりの山崎光学訪問でしたが周囲の光景が変貌しており驚きましたが、山崎さんのお宅はいつもと変わらぬ暖かい雰囲気のレンズ工房です。ご子息とともにレンズ修理を手がけておられます。
あらかじめ電話しておいたので２年前の依頼にもかかわらず、すぐ持ってきてもらいました。「どうぞ確認してください。傷は治ってますので価値がぐっと増しましたよ。でもどんどん使ってやってください。どんどん使うことで価値が増しますよ。」
Summarは見違えるように綺麗な玉になっています。更にニッコール85mm/f2に至っては付いていた傷は跡形も無くなっており、大きいレンズだけあって深い井戸のような印象です。本当にお宝の復活です。どんどん使っていこうと思いました。
さて、試し撮りをやってみました。いつも試し撮りだと言っているといって家人や友人に笑われておりますが、今回は間違いなく試し撮りです。（笑）
ニッコール85mm/f2は、一言で云って鮮鋭です。ただ、105mm/f2.5に比べるとやや柔らかみがあるように感じました。人物像を撮りたいのですが、あまりに真実を写したKievのレンズで懲りてしまった家人はモデルになってくれません。
<暮れに写した浅草・仲見世の新年飾り>
Summar50mm/f2は、以前出ていたフレアの類が全く出なくなったようです。キラキラ光る水面を写したところいい雰囲気で写っています。オリジナルなら必ずコントラストの低い写真になっていたのですが、これならもう安心です。
<船の舳先に朝日が煌（きら）めいていました。>
ライツ70年来の理想を山崎さんが実現してくれたというような気分になりました。
家人を盗み撮りしたところいい雰囲気に写ります。柔らかな画質は人物撮影に良さそうに感じました。しかしながら、モデルがおりません。精進、精進（汗）(2003.12.20) |
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