クラカメ好きですか


アナログカメラ・ルネッサンス (2004.11.14)

 産業界の価値観が変貌しニューエコノミーの台頭が云々されて久しいが、カメラの世界でも二極の動きがあるように感じている。いわゆるケータイカメラや簡単デジカメでのお手軽デジカメ文化と銀塩やハイスペックデジカメの写真派文化である。前者はおそらく従来の写真の世界に近づかない層であり、後者が写真文化を今後も形成していく人達と思われる。しかしながら、この階層においても急速にデジタルとアナログの棲み分けが進んでいるようである。

 さて、「ケ−タイ・カメラを含むデジカメは写真人口を激増させたのか」と問われれば否と云わざるを得ない。デジカメは、パソコンの頭打ちに悩んでいた電気メーカー、電子デバイス会社にとっては救世主であり、爺婆(じじばば)までもが新型カメラを振り回し何百万画素だのカラープリンターの性能を気にし、更にはパソコンをもマスターしようとチャレンジしているのだから、恐れ入谷の鬼子母神である。パソコンはデジカメでなくペーパークラフトに使ってこそ価値有りと云ってみたものの紙工作を好きな人がパソコンなど買うわけがないことに今気付いた。(汗)
それはさておき、旧来のカメラメーカがデジタルの波を乗り切って新たなデジタル文化に追随できたのか、新興IT企業がデジカメ文化を創造しているのか、今のところ双方のシーソーゲームと感じている。もっとも、私にとってのデジカメは、場を記録するコピーツールと割り切っているので他人事である。どんどん安価で性能向上を図って欲しいものである。

 写真趣味には、作品を作る楽しみと写真機を扱う楽しみがある。「芸術的感性ゼロね。」と家人に常々告げられている私には、やっぱりカメラの仕組みへの興味が大である。ところが、デジカメではこの楽しみが皆無である。作品に味を付けるアクセサリーもパソコンの上の仮想世界での話である。過去に遡って仮想のフィルターワークで作品を補正するのは時の神の冒涜ではないのかと一人憤慨している。(笑)
その反面、クラカメに時代に考案されたアクセサリーの多様さは人間臭とからくりに満ちており、機会があったらこれらを紹介していきたいと思っている。
デジカメは即時性や動画の必要に迫られて使っているのであるが、アナログカメラのようなリアルな世界での味付けの面白さがない。作品を作る上では簡単ツールなのであるが、苦楽を共にした友人という感情が湧かないのである。

 アナログカメラが面白い。コシナが取り替え引き替え新製品を出してくれるので目移りしてならない。更には魅力あるレンズ群もである。欲しいと思いながら使いこなす前に次が出るので嬉しい悲鳴をあげている。私の愛用カメラはもっぱら一番古いBESSA-Rなのであるが、ラフな使い回しにびくともしない丈夫さである。ただ、Mマウントレンズを付けられないので、オリーブ色のちょっと目立ったBESSA-R2に時折出番が回っている。
 ニコンSレンズには見るからに頑丈なR2Sの出番である。クリアなファインダーを覗いていると写真が巧くなったような気分になるから不思議なものである。最近、AE機能を強化したカメラとしてR3Aがデビューしたのであるが、同好の士からの再生産要望度合い第一位のミノルタCLEとよく似た仕様である。コンパクトさではCLEが優位であるが、シャッタースピード、堅牢性でR3Aが遙かに勝っている。しかもファインダーは等倍と35mm用の2機種を準備するという小憎らしさであり、どちらを選択するか悩ましいところである。等倍ファインダーはライカM3と同じ視野フレームであり、両目を開いて撮る私には嬉しい限りである。空中に浮かフレームには撮影の意欲をそそられるので大変好ましいと思っている。視野35mmファインダーにはこれまでのコシナの実績があるので期待していいだろう。更に、来春Zeiss Ikonブランドで発売されるRF機も期待している。コニカRFの機械版と云っていいかも知れない。コシナの現メカニズムを再設計し静音化を図ったとのことなのでライカ本家に近づくのであろう。いや、ZeissであるからLeitzを越えるのかも知れない。買う買わないは別にして大いに楽しみである。(汗)

<現代も現役のWニッコール35mm/f2.5を付けたR2S>

 更には、著名なカメラの復刻の噂もちらほらしており楽しみを通り越して金欠病を嘆く最近である。
スプリングカメラでいこう」という実にユニークな企画の本をコシナの東京サービスセンタも兼ねているハヤタカメララボの会員仲間が出したので書店に並ぶのを待ちかねていたが、この週末買い求めた。スプリングカメラをただ網羅するだけでなく実際に使った上で的確に評価し、忘れかけていたカメラがまだまだあることに気がつかせてくれる本である。スプリングカメラに興味のある方の座右の本である。保存箱の肥やしとなりかけているカメラ達を見直すいい機会かも知れない。

 ハヤタカメララボの責任者の根本さんにクラシックカメラはもちろん、コシナR3Aやこれから作られるであろうカメラ、そしてデジカメにいたる話を聞きに浅草に出かけたことでこの文章を書く気力が出てきた。ありがたいことである。(笑)
 一時期ほどの異常な賑わいはないもののクラシックカメラは静かに潜行した趣味となっていると思う。それもカメラを愛でるのではなく写して楽しむという好ましい姿である。銀塩フィルムが心配であるという思いがあるもののデジタル処理の困難さを考えるとアマチュアの世界では当面生き残るのではないかと考えている。近未来での銀塩消滅が杞憂であることを願っている。(2004.11.14)







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