からくり日記

2004年11月23日

からくり復活・宙返り人形

 近所の本屋に立ち寄って驚いた。学研からまたしてもからくり工作が出たのである。今回は以前から手にしてみたかった「唐子の宙返り人形」と「スターリングエンジン自動車」である。「私のサイトのネタだ!」ということでプラスチックマネーを取り出してしまった。ホントは阿川弘之氏の最新の随筆を買いに行ったのにえらい違いである。もちろん阿川氏の「亡き母や」も手に持ったのであるが・・・(汗)
 洋の東西のからくりを手にして思うのであるが、西洋は産業革命で分かるとおりインフラの革命にまでつながるものが多く、たとえ微笑ましい機械であってもその延長線上には悪魔と天使が共存しているような気がしてならない。それを制御する人間の手に自らの運命を委ねるという時の時限爆弾が付いているかのようである。
江戸からくりは、どうやらその心配がなさそうである。既に作った茶運び人形曳き童子そして此の宙返り人形などは、江戸の社会を革新的に変えたわけではなく大衆を楽しませてきた見せ物人形であり、実物の工作は美術工芸品の域に達しているのである。もっとも、産業インフラに至らないのは自分より優れた才能のある者は潰して体制の安穏を図るという菅家以来の島国の伝統のせいかも知れない。
一方、きらびやかな西洋文明は血に染まった殺戮の歴史の裏面史であって、時代遅れな封建時代だったはずの江戸時代は、国際的にも誇れる実に穏やかな時代であったということが最近見直されている。その動きを見てやっと本来の自立した日本に戻ってきている手応えを感じ始めたが、いかがなものであろうか。

 この話になると本題を忘れそうなのでこの辺で戻ることとして、まずスターリングエンジンであるが、熱の力で動くという点で蒸気機関にも相通じるので別の場で語ることとする。

 本題の宙返り人形は、からくり日記のコンストホンテインで書いたように重力を巧みに操った人形である。往時は緩やかな重力の移動を実現するために水銀を使っているのであるが、今回はパチンコの玉を使うという素晴らしい着想である。ストンと動くと元も子もないので胴体内に梯子(はしご)状の溝を付け、移動時間を長くしているとのことである。カタカタカタと鉄球の落下音を出しながら人間らしいゆっくりした動きをしてくれるようである。学研のサイトの動画デモを見て感服し、さて期待を込めて作らなければと思った次第である。

     <ちょっと不気味な雰囲気です。>

 華奢であるものの半完成の唐子人形は、足や胴体が軽やかに動き、これだけでも興味深い動作が想像できる。頭(かしら)を付けるとご覧の通りであるが、ちょっと表情が単調なのは大量生産品なのでやむを得ない。手足を連動させるのはテグスを使うだけの単純さであり、着物を着せ、胴体に鉄のボール3個入れ頭を付けると完成である。
この人形のミソはどうやら調整のようである。宙返りする段の上下差を付属のゲージできちんと出すことと開始位置、左右にぶれたときの補正、これらのことに説明書のかなりのページを使っているところを見ると調整に少々時間を要しそうである。
これからの工作の進捗について後日報告することとする。

ということを二三日前に書いていたが、11/23の夕食後取りかかり人形だけは一気に作ってしまった。予想通り手足連動用のテグスの張り調整が微妙でなかなかうまく定まらない。まだちょっと不満であるが、とりあえず宙返りをしてくれるから大したものである。いえ、もちろん私の腕ではなく、学研の設計者、いや江戸の先人、更には地球の引力に乾杯である。(笑)

<実力はご覧の通り、見事に逆転します。途中で止まったところをパチリ>


<見事に宙返りするとデジカメの撮影には苦しいものがあります.。でも拍手>

演技台をきちんと整えて改めて写真を撮りたいと思いつつこの項を終わります。(2004.11.23)







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