からくり鐡道の仲間達

クレーン車(Nゲージ)


 貨車を語っても「何だ四角な箱ではないか。」と云われてしまいそうなので嗜好を変え、クレーン車について書きました。一時期、Nゲージのクレーン車を集め尽くそうかと馬鹿なことを考えたこともありました。面白い安いからくり満載であるという単純な理由からなんですが、短期間にある程度集まったので終止符を打ちました。手間がかかって大量生産に向かないのか種類が少ないので気合いを入れるまでもなかったようです。コレクションとしての面白味を感じなかったというのは言い過ぎでしょうか。(汗) アクセサリーを含めると砂漠の砂ほどあるライカ沼でこう云ってみたいものですが夢のまた夢です。それはさておき、コレクションとして普遍的価値を持つものは、芸術品や工芸品として感じるものがなければなりません。Nゲージのような大量生産品はコレクションになり得ないと思います。鉄道模型は運転して楽しむに限ります。
 とはいえ、Nゲージのクレーン車の極めて精密な仕掛けとデフォルメの巧みさには舌を巻きます。飾るのではなく、レイアウト上の現役の車輌として活躍させようと思い直した次第です。レイアウト上でなかなか活躍させられませんが、手元にある車輌を紹介いたします。
 一番古いものが20年ほど前のCONCOR社製米国型クレーンです。次いでアーノルド製DBのクレーンです。いずれも蒸気エンジンで駆動する大型クレーンをNゲージで製品化したもので米国型はより糸綿で動作するようになっています。アーノルド製はピアノ線でワイヤーを表現しており、糸目も感じられずレイアウト写真に適した車輌です。
その後、Bachman製SantaFeの蒸気クレーンが入線しました。
そういえば、アメリカ帰りのアスターの玉田さんによると、彼の地では何でもかんでも蒸気で動かすことが盛んで、バークシャーのPRに出かけた一番ゲージのライブスティームフォーラムで蒸気クレーン車が白煙を上げて動いていたそうです。写真を見せてもらうと、成る程蒸気のオンパレードです。このような模型を作ってみたいなと心底思いました。何かいい素材がないものでしょうか。(汗)

 最もからくり的な車輌は、銀座の伊東屋が鉄道模型に力を入れていた10数年前に入手した、ROCO製のディーゼル駆動クレーンです。
走行時のスタイルは、天板に棒を載せた有蓋車のようです。


いったん現場に到着すると、三段引き込み式のビームが伸び、クレーンの四隅から車体止めの足が出ます。その足には、随行の2軸貨車に積まれた四角な木材で高さを調整し固定します。フックの先には吊り上げ用のジグを付け、重量物の作業時にはクレーン後部に装着するバラストまで準備されています。これらを実物と同様にセッティングできるのは素晴らしいと思います。ディスプレイモデルとして好適な車輌です。


 国鉄のNゲージ車輌が続々作り出される割にはクレーン車の登場がありませんでした。ある時TOMYから初めて国鉄の大型クレーンが登場しました。国鉄の雰囲気を味わうにはバター臭い貨車では味わえません。淡い黄色の車体はなかなかいいなと思いますが、まだ私のイメージには遠いようです。スマートすぎます。

 実際のクレーンとなるとほとんどお目にかかることはありません。これまで見たものは薄汚れた黒または焦げ茶色のものが殆どです。実際に使われている現場に巡り会ったのはたった一度だけです。
 小学校の5か6年生だったので昭和33,4年頃と思います。当時東京−佐世保間を走っていた寝台付き下り急行「西海」が高橋−武雄駅間で最後尾が脱線し、枕木を切断しながら走行し、長時間佐世保線が運休したことがあります。
「おい、急行が脱線転覆したらしいぞ、見に行こう。」と大袈裟な噂を聞きつけた我々は放課後、線路伝いに2kmほど歩いて現場へ急行しました。ところが怪我人もなかったと見えて拍子抜けするほどのんびりした現場でした。大きく傾いた最後尾車輌と煙を上げて待機する蒸気機関車ののどかな雰囲気が印象に残っています。乗客は殆ど残っていなかったようです。
 鳥栖からクレーン車が到着するのを待っているのだと作業員が喋っていたので我々も待つことにしました。現代なら大型クレーン車が駆けつけてさっさと処理をするのでしょうが、当時は鉄路上をトコトコ来るしかなかったのでしょう。
 「これは珍しいものが見られそうだ。待とうよ。」ということで、どれくらい待ったか覚えていませんが、やがて初めて目にする馬鹿でかいクレーン車が到着し、僕らは歓声を上げてしまいました。
細かいところは思い出せませんが、クレーン車の屋根に煙突があります。その下には確かに蒸気機関車と同じピストンやらクランクがありました。これは一体どうやって動くのだろうと思っては見たものの、当時の我々が分かるはずがありません。
結局、クレーン車の蒸気を上げるのに時間が必要だったのか夕暮れまでに作業は始まらず現場に心を残しつつも帰路に着いてしまいました。
これ以降、実働しているクレーン車を見たことはありません。この時見たのは夢だったかなと思うくらい昔のことになってしまいました。

そうそう、小さくて可愛いクレーン車を忘れておりました。独逸フライシュマンの2軸クレーンですが。駅の片隅で荷物の積み下ろし使えそうな愛嬌のある姿に負けて7,8年前に池袋のデパートで入手しました。この車は、姿とは裏腹にバランスが悪くビームを横にすると不安定になります。名実ともに見かけ倒しの製品に腹を立てながら、鉛の小粒・ミクロウェイトをがらんどうだったクレーンのウエイトに詰め込んで問題を解決しました。この貨車に限りませんが、クレーン車の作業情景を創るには車体のバランスを解決しておく必要があります。車輌の隙間を見つけてはバランスの良いクレーンにするためにミクロウェイトを詰め込むことが肝心です。


単調な貨車の中にあってアクセントを付けてくれるクレーン車はレイアウトの花のような気がしています。たとえ貧弱なレイアウトであっても転覆列車の復旧風景を作ってしまうと命が吹き込まれたシーナリィにしてしまう魔法の車輌です。一家に一両クレーン車を入線させましょう。(笑)(2005.3.6)







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