ライブスティーム雑記帳
ライブスティームに親しむ前は、蒸気機関車は一般的に左右にエンジンを持つ二気筒であると思っていた。多気筒を持つものはBIGBOYに代表されるマレー型、縦型3気筒エンジンのシェイ、それにマレー型で炭水車にエンジンを持った六気筒のものを写真で見たことがある。車輪の配置でニックネームがあることを知ったのも米国型模型やライブスティームに親しんでからである。一般の方には全く関係ないことかも知れないが、この愛称を聞いて車輪配置が浮かぶのだから困ったものである。(笑) 例えば、アメリカ大陸の開拓時代の標準的に使われた4-4-0はアメリカン、日本向けにたくさん輸出された2-8-2はミカド、ハドソン川沿いで高速で旅客列車を牽引した4-6-4はハドソンと云うニックネームを冠しているのである。からくり鉄道の優等生の2-8-0 JNR9600は、コンソリデーションと呼ばれている。 それぞれの愛称には歴史の重みがあるのであるが、駆け出しの私にはとても紹介できないので関心のある方は、様々な愛好家が作られた関連サイトを参照していただきたい。
ところで、不思議なことにエンジン構成は車輪配置から類推できない場合がある。実は長い間ヨーロッパの機関車に多気筒の蒸気機関車が存在することを知らなかったのである。ヨーロッパには、ダークグリーンやエンジ色、艶あり黒に縁取りされたエンブレムなど日本の感覚ではおよそ機関車とは言い難いものが多く、乗用車の感覚のように思える。まるで外部に無骨さを出してはいけないと云う不文律があるかのようである。例えば、私の所有するJUMBOは、2-4-0と云う車輪配置であるが、外部シリンダーが無いので、「あれっ、何で動くのだろう。」と疑問を抱く人もいる。この機関車はフレームの内側いっぱいに2個のシリンダーが入っておりクロスヘッドやクランクもボイラーの下にあるのだ。 構造をご覧になりたい方はこちらのJUMBOを参照いただきたい、 気がつかないふりをして20数年、アスターではいつの間にか車輪配置ルールでは実力を知り得ない内外3気筒、4気筒の機関車を何種類か製造していた。 欧州の多筒式機関車は、昨年発売のフライイングスコッチマンA4は3気筒、更に遡ったキングジョージVは4気筒ワルシャート式であり、蒸気供給方法には各シリンダーへ並列に行う単式や使用した蒸気を回り持ちする複式というような方式がある。
さて、今年はアスターから2、3種類の機関車が発売される予定なので関係者の心は大きく揺れている。米国の強力な機関車4-8-4バークシャー、英国の優美な4-6-2パシフィックのダッチェスそしてご存じJNR2-8-2ミカドのD51である。全部好きな機関車なので入手できれば云うことはないのであるが、どうやら今回の決め手は四気筒になりそうである。ダッチェスはその優美な姿に似合わず四気筒エンジンなのである。小振りな車体の持っているメカニズムを知ると驚愕してしまう。煙突はダブルチムニーと呼ばれる排気を2つポートに分離した形式である。この機関車の排気音に惚れてしまったのが選定理由である。もちろん四気筒機関車の組立というからくり度に期待することも大きい。 ダッチェスの写真を見ると第一動輪は内部エンジン、第二動輪は外部エンジンから駆動されている。外観では普通の機関車にしか見えないが、内部構造はこのように思いがけぬ作りになっている。弁装置は内外ともにワルシャートとのことでどの様にリンクされているか興味がある。四つのシリンダーなので動輪の位相は90度ずつずれており、一回転毎に8回排気することになるのだろうか。二気筒の機関車の発車は、ゆっくりとポッ・ポッという音を響かせるのが、この機関車では速いテンポの断続音で動き始め、速度が上がるにつれて連続音に近い音響をたてるのであろうか。マレーでは2組のエンジンはそれぞれ独立しているので同期しながらの排気音は期待できないのであるが、今回は違うと思われる。3気筒のシェイは120度位相のずれたピストンで一種独特の排気音が楽しいと感じる。 ところが、昨晩渡辺精一さんの本を読んでいたら四気筒機関の排気は二気筒と同じだという記述があった。英国の鉄道会社によって弁のメカニズムが異なっており、LMSの場合はワルシャートのリンクから取り出しているとのことである。ということは左右のシリンダーは内外ともに同じ位相を持ち排気のタイミングが同じということのようだ。アスター製品の構造を実際に目にするのが楽しみである。ということは2組が重なった強烈な排気音が期待できる。 2月の北裏鉄道でのダッチェス走行のダイナミックさを理解した。印象は小振りな機関車であるが、六両のボギー客車を軽々と牽引し恐ろしく大きなドラフト音をたてている。やっぱり一回転四回の排気音で排気のタイミングが合っている効果が大きようである。排気がパラパラと同調していなければ組立調整が下手だと云われそうである。と云うことでマレーよりも弁調整が難しいという玉田さんの言葉の意味が分かってきた。(2005.3.25) |
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