ライブスティーム雑記帳

最近のライブスチームのからくり(C622)(2006.3.6)


2.JNRC622
 月並みな国鉄型機関車であるが、構造が画期的に思えたので購入してしまった機関車である。 この機関車のあとに英国型Duchessを作ったのであるが、こちらは大変オーソドックスな構造であった。
C622は、アスターが10年おきに構造を変えて世に出している国鉄型機関車であり、国内には根強いファンが多いようである。
このC622は設計に更に新しい試みを取り入れており満足いく結果を得た。コストパフォーマンスがいい機関車であり、メーカーはきっとあんまり儲けなかったのではないかと推測している。如何なものであろう。
 C622で注目に値する機構等を次に紹介する。

・ドレイン弁
 バークシャーもそうであるが、最近のアスター製品にはドレイン弁が付くようになっている。もっとも精緻で実物もどきの動作を実現したのが前述のバークシャーである。C622でも新方式で確実なドレイン弁を実現している。
これまでの方法は、シリンダー下部に排出口を設けその先端の弁を開閉しているが、C622の場合シリンダーブロック背面にシリンダー及び弁室から導かれた排出口がある。この2つの孔に被さったドレイン弁を回転しドレインの経路を開閉し排出する構造である。首振りエンジンの動作と似ている。運転室の左側で上下できる大きめのレバーがドレインコックであるが、説明を受けないと何だか分からないかも知れない。

  <回転するドレイン弁、排出は回転板真下>

操作は全閉、シリンダー開、全開のクリック付きレバーで大変スムーズである。開口面積も大きいのでドレインの排出は確実に行われ、煙突からの油混じり黄金水の噴出を避けることが出来る。
 あえて欠点を言えば、ドレイン排出が真下に出るものだから、線路を油が汚してしまうと嫌われているようである。確かにシリンダー内側からのドレインなのでこの感は否めない。運転後はこまめに線路を掃除する必要がある。

・加減弁
 一番ゲージのライブでは加減弁はニードル弁が一般的である。作成が容易であるのに一因があろう。C622の構造は、二枚の円盤を摺り合わせて円盤に開いた2つの孔の重なり具合で蒸気を供給する構造である。この孔は円形ではなく涙形をしておりニードル弁よりも運転のコントロールが容易とのことである。実際に運転すると過激な操作でも速度変化が緩やかであり微妙な速度制御が出来ると感じている。しかしながら少々凝りすぎな感じもするが、メーカー側での評価はいかなるものであろうか。

  <加減弁の心臓部>

・ガスバーナー
 ガス炊きの機関車は嫌いである。というのは、炎のコントロールがきわめて困難であり、未だにマスターできないのである。特に旧型のアスターで採用されたステンレス管の先端を塞ぎ途中にに櫛状にスリットを入れたバーナーは気温やガスの充填状況に左右されてしまう。我がクライマックスは、確率7割がご機嫌斜めである。

  <新型ガスバーナー>

ところが今回新設計されたバーナーは台所のガスコンロ状の火口が6個並んでおり、燃え方もガスコンロと同じである。個々の火口には空気供給口があり、コンロ内部にもガスを一気に吹き出させないための微少なメッシュが入っている。
結果は実に安定して燃えるのであるが、冬場には少し機嫌が悪くなるようである。旧型と比率は逆転したのでホッとしている。
併せてC622の燃焼系で特記すべきことと云えば、冬場に向けてガスを暖めて気化を補助する蒸気ヒーターがガスタンク内に入っていること。オプションであるが家庭用ガスボンベから簡単に燃料を入れることが出来る充填パイプを開発したことである。これらのものを使うことでガス炊き機関車が飛躍的に使いやすくなったと思う。

  <ガス暖め蒸気ヒーター>

 ただし、2006.3現在、折角開発したバーナーを生かす機関車はまだ開発されていない。(汗)
ついでで恐縮であるが、テンダーとの接続は昔から同じ方法である。が、いつもアルコール管などの接続がもう少し何とかならないものだろうかと思っていた。このC622では特殊なコネクターを採用したので一発で接続可能となった。これは実に楽である。が、高そう。(笑)
このコネクターの採用もどうやら最初にして最後になりそうである。


・フルイコライジング
 本体の足周りは完全を期す作りである。まず、個々の動輪を支えるバネは微少な燐青銅板を重ね合わせて作る本格的な重ね板バネである。各動輪間はリンクで繋がっていて動輪の動きを前後の動輪に伝え線路への喰い付きを良くしているのである。更に後従輪ともリンクしており軸重が適正に配分される構造になっている。

     <足回りの接写>

 国鉄の柔な線路規格の鉄道で正しく運用するには微妙な軸重のコントロールが必要であるが、アスターでもこれを実現しているようである。実際には後従輪への配分が実物通りにできているようで第三動輪の軸重が軽く空転を招きやすいことが分かった。後従輪のバネを緩くして動輪の軸重を上げる必要がある。模型の場合は全重量を動輪にかけるのがベストであるが、本物と同じにというこだわりがこの構造にしたのだろう。再調整しなければと思いつつ1年以上経過した。
機関車の構造に息切れしたのかテンダーの台車は鋳物中心であったのはちょっと残念である。(笑)

(追記)
 バークシャーの足回りは、動輪のみイコライジングされているが、鋳物製のダミー構造でバネが入っていない。これで良いのかどうか分からないが、運転後の動輪の汚れを見る限りではイコライズ効果が完全ではなさそうである。1,2軸はきれいで汚れを落とす必要がないくらいであるが、特に4軸の汚れが激く軸重が軽いようである。どうやら後従輪への重量配分が多すぎ、前輪は押さえ板の変形で軽くてその役をなしておらず、1,2軸に重量がかかったようである。実際に線路上を走行させてみると運転コロ上では見つからなかった問題を発見することが出来る。 本来ならばC622と同様に後従輪と連動するイコライジングは必要に思えるのであるが手に余りそうである。さてさて、どう処置すべきであろうか。(2006.3.12)


3.その他思いつくこと
・強制給油方式
 LMS・Duchessに搭載している潤滑油の供給方式である。ボイラーからの蒸気を直接潤滑油タンクに導いて加減弁の開閉に左右されることなく常時ロスコー式潤滑を作動させている。 従って加減弁を閉めても僅かに蒸気とオイルがエンジンに流れているのである。 開いたまま放置するとオイルが無くなり、開け忘れて無潤滑運転となり兼ねないので注意を要する。コンパクトであるが四気筒という高機能さ故に従来のロスコー式として組み込む空間が無かったのでキャブにオイルタンクを設置することになったようである。
前作の3気筒A3も同じ方式だったとのことである。







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