ライブスティーム雑記帳

思いつくままの運転技術(1) (2006.4.15)


 運転技術などと大それたテーマを書いてしまうと先輩諸氏に何を云われるか分からないので、ここでは私の下手な運転方法について述懐してみよう。(汗)
書きためていたメモを文章化してみたが、関連の写真等は後日追加することにした。

 初ライブ運転経験は30年近い昔のアスター阿里山shayである。意外にすんなりと完成したものだからブロワーの購入が間に合わなかった。今考えると馬鹿な話であるが、「何とかなるだろう。」と少な目に水を入れブロワーが効くまで圧力を上げることとした。火を着けると目の痛いこと、動かしたい一心で1kg/cm2まで我慢した。10分程度かかりやっと通風弁で通気出来るようになりホッとした。決して真似して欲しくない運転方法である。

 初手から禁じ手を紹介したのであるが、ライブスチームは、機関車を買っただけでは簡単に運転できず様々な小道具が必要である。こんなことが趣味としては理解しづらく万人の馴染みやすいものでないかも知れない。それに最初の投資が大きいと云うこともある。もっと普及させるにはと言うことを関係者は悩むべきであろう。
投資が大きい点は、確かにそうなのであるが、とにかく寿命の長い模型である。のClimaxは、1982(昭和57)年製である。それが当時の性能のまま運転できるのである。仮に転売したとしても相応の価格で値段で引き取っていただけるであろう。 また、30年余我が家に鎮座しているロードローラーもびくともせずに蒸気で動いている。  メンテナンスをきちんとやれば恐ろしいほどの寿命を持っているのがライブスチームである。

     <昭和57年製作 Climax>

 ライブスチームに触れて20年余になるが、これまで様々の失敗を経験しながら運転を楽しんできた。その過程で習い覚えた運転のノウハウを整理しておくことは自分にとっても或いはこれから始めようと思われる皆さんに何かのヒントになるかも知れないので思いつくまま運転に関することを列記した。
 それにしても、肝心なことは常設の線路を持ちたいのであるが諸般の事情が許してくれそうにない。(汗)
 標準的な運転方法についてはアスターのHPや同好の士のサイトに細かく記述されているのでそちらに譲ることとして、これまでアスターを中心に何種類かのライブを運転して気付いたことを整理してみた。


運転準備
 まず各部の注油から始めることにしている。一番ゲージはせいぜい3-4kg、重くても10kg越すものは滅多にないので布を広げた上にごろりと逆さまにして動輪軸受け、弁装置、クランクシャフトなどの可動部に重点的に注油する。潤滑油はミシン油やシリンダー油でもいいのであるが、私の場合はスプレー式モリブデン入りグリをこの数年愛用している。細長いノズルで奥まで完全に届くこと、噴出時は溶剤込みなので軸受けの中まで浸透している。對磨耗性が高くグリスと言いながらもべた付きが少ないのでゴミが付きづらい。と言うことが使っている理由である。 運転前に注油することで機材の確認が出来るのがもう一つの理由である。

次に、機関車とテンダーの接続である。タンク機関車であれば線路に乗せてお終いであるが、テンダーが付いている接続に手間取る場合が多い。バークシャーではバーナーと運転室下の隙間が狭いために燃料パイプ接続に意外に手間取ってしまう。
これまでの経験から云うと簡単なようでコツが物言うのは接続である。機関車各々の接続方法や個体の状態を見定めて接続テクニックを習得する必要がある。
 この観点から接続機構の完成されたものは2004年発売のC622である。独逸製の特殊コネクターを採用しワンアクションでの接続、切り離しが可能になっていた。欠点と言えば切り離してしまうとコネクターが閉め切られるので水抜きが出来ないことである。
最近の機関車は大型化してきたので蒸気を上げて線路に置くと云うことが困難になっている。線路上で組み立てて速やかに蒸気上げをやらないとお仲間からの無言の圧力を感じるので試験台で腕を上げておくのが必須である。(汗)

 <C622の運転室 床板下部左右の斜めのピンがコネクター>

さて、注水である。
 加減弁、バイパス弁を閉め、通風弁を開いてボイラーからの空気の逃げ道を確保しておく。注水はRUBYのようにボイラーへ注射器等で直接補給するもの以外はテンダーの手押しポンプで行う。ボイラーとテンダーの容量を頭に入れていればいいのであるが、水を溢れさせるようないい加減な注水になっている。 また、ボイラー付属の細い水位計はあくまでも目安でしかなく「水は少ないより多い方がいい。」と多めに入れてしまいがちで蒸気を上げるのに時間がかかるのは毎回である。
蛇足であるが、そのような場合はボイラーが少し暖まったところでヤットコで安全弁のピンを持ち上げると噴水のように水抜きが出来る。安全弁の確認を兼ねてやることが多い。(汗)

 続いて注意を要する燃料補給を行う。 以前は小さな漏斗を使って目分量で入れていたが、最近は組立キットに付属の25cc注射器に長めのシリコンチューブを着けて利用している。安全性、操作性の面で重宝している。ただ、最近のバークシャーのように500ccの燃料タンクともなると大変なのでこの場合は漏斗方式に変える方がいいかも知れない。
ガスの場合は注入時にガスタンク周りの温度を下げておくことが必要なので暑い夏は冷水を入れて、寒い冬は水を入れる前に注入というように季節に合わせた工夫をしている。更に、注入後はしばらくタンクを静置して液化ガスが下方に下がるようにしている。
こんな努力をしてもガス炊き機関車の運転は燃焼が思うようにいかず何年経っても上達しないのである。習うより慣れろと思うのであるが、まだ精進不足なのであろう。

これで運転に必要な準備は整ったので一息ついて再度点検をすることにしている。

 潤滑油であるが、私の場合は運転終了後に補給することにしているので残量をあらためるだけである。 次いで安全弁のピンを引いて固着の無いことを確認する。言い忘れたが、バイパス弁を開いて手動ポンプで水の戻りチェックをこの段階までに確認しておく。
きちんと組み立てておくと意外にねじ類は緩まないのであるが、組立後しばらくは緩みチェックをやることが望ましい。私の場合は堅く締めがちなので締め増しで壊した経験があるため要注意である。

   <C622の潤滑油タンク ピストン前の最前方中央に設置>

色々書いているが、これらは手先が覚えているので慣れれば簡単な作業である。

火入れ
 アルコール焚き機関車では、燃料ノズルを2,3回転しておけば、1,2分でアルコールがバーナーに行き渡る。その頃合いでブロワーを煙突に付け、スイッチを入れるとシロッコファンが回転しバーナーから煙管を通って煙突までの空気の流れが強制的に作り出される仕組みである。蒸気圧が上がれば電動ファンの代わりに細いノズルから蒸気を噴き出し周囲の燃焼ガスを巻き込んで煙突から排出するのが通風弁である。この仕掛けは本物でも全く同じ原理である。 停車している蒸気機関車が煙を噴き上げている光景をご覧になった方は多いと思う。

 さて、点火であるが、この作業は機関車毎にそれぞれ要領がいる。しかしながら機関車個々に述べるほど経験を積んでいるわけではないので一般論をご披露することにしたい。
まず必要なものは火付け道具である。火口の出来るだけ長細い100円ライターと先端を三角にして焚き口を開くための引っ掻き棒、逆の端にはバーナー芯を巻いて必要に応じてアルコールをしみ込ませると火付け棒となって実用性が高い。 
点火の楽なボイラーはJNR9600C622のようなロコ型ボイラーである。ライターを直接焚き口に突っ込んで点火出来るのがいい、その他の機関車は従輪や動輪軸の下から点火することになるので慣れが必要である。この時活躍するのが前述の火かき棒先端のバーナー芯である。アルコールの火玉を狭い箇所から入れて点火するのである。

  <9600の運転室、火室扉は下方に開きます>

点火後、数分して圧力計の指針が1kg/cm2を越えるまでは一服の時間である。 この時に目を刺すような排気がブロワーから排出される場合は不完全燃焼なので後日バーナーの見直しが必要である。芯の本数が多すぎたり、古くて固まり不完全燃焼している可能性がある。古い機関車はバーナー芯を入れ替えただけで復活する場合が多いようである。
昇圧したところで通風弁を少し開きブロワーを外し熱風が煙突から吹き出していることを確認する。圧力が高まるにつれて次第に排気は強くなるので適度の排出量になるよう通風弁をこまめに調節する。
最初は機能確認のために安全弁が作動するまで燃焼を継続する。また、最大規定圧力まで上げておく方が初回の暖機運転にも有利と考える。

   <Duchessの運転室 手狭です。一歩間違うと火傷します>







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