ライブスティーム雑記帳

蒸気機関車の手入れ(2006.9.11)


 最近ラージゲージに接する機会が増えたのでメンテナンスの大変さをとみに感じるのであるが、ここでの話は一番ゲージに限定させていただきたい。 5インチあたりの大型機から見れば45mmなど屁みたいなものかも知れないゆえに初手からの言い訳で恐縮至極である。(汗)
 さて本題である。一番ゲージの手入れについて整理してみたらどうだろうと云う声なき声に誘われて、いつもやっていることをメモ代わりにまとめてみた。腱鞘炎で運転を休止しているストレスのなせる技かも知れない。

さぁー運転だ)
 運転会当日は天にも昇る心地である。運転できることは勿論のこと、仲間に会えることも嬉しい。会社と違って自分の好きなことを喋っておけばコミュニケーションが成り立つ世界は一種のユートピアである。 しかしながら、どの世界でも同じことが云えると思うのであるが、行き過ぎると閉鎖された世界での自己満足となってどこか宗教に近くなってしまうので要注意である。 常々に客観性あるものの見方、俯瞰的な視点が大切だと思っている。
おっと、話題が逸れそうなので機関車に戻すが、電動室内模型と違って運転を終えたライブスチーム(以下ライブと省略)は汚れの固まりである。大型のライブは釜の中まで石炭殻や硫黄分で大いに汚れるのであるが、未経験なのでこの世界には足を踏み入れぬこととする。
ライブの汚れには様々なものがありこれを綺麗に取り除いて次回もスムーズに運転出来る状態を維持することがすることが手入れである。楽しい運転つらい清掃とならないように貴方はどのようにしていますか。

   <疾走する四気筒機関車Duchess。 汚れをいっぱい跳ね上げています。>


(どうして汚れるのか)
 ライブスチームは、潤滑油混じりの排気を煙突から吐き出すので車体には油とともに巻き上げた泥やゴミがべっとり付着する。これが嫌なので購入後一度も運転したことがないという御仁もいるようであるが、ライブ愛好者として本末転倒と考える。 ライブは汚れてこそどれだけのものである。少々汚れていても機能美溢れる機関車と感じるものは中古でも大抵大丈夫である。 クラシックカメラの世界でも新品そのままの包装を数十年後の現在も開封しない人がいるとのことであるが、このようなものに限って調子が悪いことが多いようである。機械は常に使い続けることが肝心である。

 <C622潤滑油タンクと給排気口 細いパイプから蒸気とともにエンジンに入ったオイルは
                     前方の排気口から煙突へ>

         <ご覧の構造>

 ライブの汚れは車輪に集中する。動輪の接触面は重い車体を支えて回転するためか、意外に綺麗である。この箇所が不揃いに汚れている場合は軸圧が均一でないことがあるので車軸の具合をチェックする必要がある。動輪全体が油で汚れてしまうのは線路清掃の頃合いだと考えて良さそうである。客車や貨車も含め動輪以外の車輪には金属粉混じりの黒い汚れがこびり付くが、真鍮製の線路が鉄やステンレス製の動輪に僅かに削り取られるから仕方ないことである。手入れをしない車輪には汚れが層をなしてこびり付いていることが多い。線路清掃車両ならぬ線路汚染車両とでも云える車両である。 
書きながら気付いたのであるが、上記C622は確実に動作するドレイン弁、すなわちシリンダー内の油混じりの凝結水を排出する仕掛けを持っている。 しかしながら実物と異なりシリンダの内側に排出口があるために線路上面に直接ドレインが落ちてしまうのである。残念ながらアスターの誇るC622は線路汚し機関車といえるかも知れない。

   <回転する板がドレイン弁、下部中央に排出口があります。>

 まああんまり汚れることを気にしては運転を楽しめないので運転後は線路掃除に徹することにしたい。 その後市場に出た2-8-4バークシャーという巨大な米国型機関車では水平に排出される機構となり線路を汚すことはなくなっている。
 線路に電気を通電して運転するLGBなどのGゲージと異なり、ライブスチームでは線路の汚れが運転に致命的でないことから汚れた線路は意外に多いものである。 とはいえ、牽引力に影響するので清掃に努めることにしよう。 我が家に線路を敷設できたあかつきにはピカピカにしておきたいものである。(夢だぁ・・・・)


(掃除のルール)
 手入れルールは単純である。やる気のあるときに手入れをするということである。(汗) 運転会で疲れて帰宅すると殆どやる気が起きぬものである。この怠惰な気持ちを防ぐには、「手入れは運転会の一部にする。」ことである。

 運転会の朝は、心も弾み、前日に運搬箱に詰め終えた機関車を抱えて現地に向かうのみになっている。全ての作業はは現地で始まるようにしておくことが重要である。
大ゲージの場合はなかなかこうは行かぬと思うのであるが、一番ゲージのいいところはこの身軽さである。
既に前回の運転終了時に次回の準備を済ませているので運転前の手入れを省略することも可能である。機関車の確認と軽く軸受け等に注油する程度で前準備は終了である。 もちろんこの後は注水、燃料補給が始まるのである。


(清掃の実際)
 さて運転を楽しんだあとは機関車は油と泥にまみれている。加減弁を軽く閉め、潤滑油タンクから凝結水を抜き新しい潤滑油を入れておく。 また潤滑油の残り具合をチェックすることで潤滑機能の確認もできる。
 ブローダウンバルブがある場合はボイラーに水抜きから始める。圧力が残っていれば水抜きは簡単である。大型ライブではこの水で手を洗うそうであるが、一番ゲージではおしっこ程度なので実用的ではない。
この段階で注意することは、加減弁などの固着である。高温のまま弁を締め込むと冷却後は確実に固着する。JUMBOの加減弁を固着させて再取り付けをやったことがある。 運転後お茶をしているうちに緩めることを忘れたというようなうっかりミスに起因することが多いので年配者の多いライブの世界では注意したいものである。

 さて、ボイラーが空になると逆さまにしても大丈夫である。この段階では欧州ライブの権威である神田さんの清掃方法を見習うこととし、車輪にこびりついた汚れをぼろ切れでふき取ることにしている。油、チリ、金属粉の混ざった汚れは時間の経過とともに清掃が困難になるので早い段階での除去をお薦めする。一つずつ丁寧に拭く過程で問題点の発見も可能である。
「車体がまだ暖かいうちの清掃が機関車を綺麗にするコツですよ。」とは神田氏の言である。 ボロ切れは必ず工具箱に入れておきいつでも使えるようにしておこう。 私の古い下着を切り裂いて使うという涙ぐましいことをやっているのである。


(掃除だけではありませんぞ)
 機関車が新車のうちはネジ緩み確認が大切である。想像以上に力のかかるライブスチームは意外に緩くなっていることが多いので要注意である。古い機関車でもたまには確認することは貴重な部品紛失を避ける手段である。 ダミーのパイプや手すりが緩んだり外れたりしてしまうことが多く、運転後の線路上には部品が落ちていることが多いものである。 運転中のとっさの出来事に、あらぬところを押さえたために部品を紛失してしまった機関車も多く、私の古い機関車にもこのようなものがある。 もっともそれだけ活躍しているという勲章みたいなものである。注油は細い金属パイプの付いたモリブデン入りグリス噴霧器タイプを現在愛用している。


(念には念を入れよう)
 運転会場から重い機関車を持ち帰るのは難行苦行である。車で来た方も遠方からだと家に着いたらぐったりと云うこともあるだろう。房総半島の先端あたりからおいでになる方はきっとそうに違いない。(笑) でも帰宅して機関車をそのままにするのは維持管理という観点からは避けたいものである。 我が家では帰宅後心を奮い立たせてエアコンプレッサーを持ち出すことにしている。給気パイプを給水バルブに接続し高圧空気を送り、パイプの中に残っている水を排出している。テスト運転用のロコに機関車を置きボイラー圧力を上げ加減弁を開くと煙突から水を吹き出して回転する。これでエンジン内の凝結水はあらかた排出される。更に通風弁、汽笛弁を操作することで安心して保管することが出来るようになる。ブローダウンバルブのあるボイラーであればここから内部の水を吹き出すことで仕上げは万全である。
これでもまだ水気を感じるので大抵は一晩ケース外に置いて乾燥させている。
たまの日曜日、機関車を綺麗にするために綿棒などで布では届かない箇所を掃除するのは骨董品の手入れと相通じるような気がする。心静かに隅から隅まで綺麗にすると運転すればまた汚れると分かってはいても心が落ち着くものである。(のかな?)

といったようなやり方が私の清掃である。
 思いつくままに並べてみたのであるが、これでも十分と云うことはない。むしろまだ荒っぽいと思われる向きもあるかも知れないが、このやり方で20年、各車両とも元気で動いているところを見るとまあ大丈夫であろう。
自分なりの管理方法を生み出して愛車を長生きさせたいと思っている方のご意見、工夫論等を拝聴できれば幸いである。
ただし、一番ゲージについてと言うことでご勘弁願いたい。(汗) 
ここまで読んでいただき感謝いたします。(2006.9.11)







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