ライブスティーム雑記帳

C型ボイラーのJUMBO (3) (2008.7.10)


 JNR9600の次に到来したのは最近は静かに棚に乗っているLNWR JUMBOである。実は居間に存在することを唯一許されている機関車である。小さくて目立たないからまあいいかとお目こぼしのようである。(苦笑)



この機関車は9600を落札した直後に続けざまにオークションで入手したものである。完成品であれば手を出さなかったのであるが、未組み立てとあってついつい手を出してしまった。
 さて、JUMBOは前作がもたついてしまった反動で一気に作り上げてしまった。その結果、残念ながら製作記録を省略して組み立て中の写真が一枚もない。今となっては大変残念であるが、弊からくり鐵道の機関庫においてその構造をご覧いただくしか策がなさそうである。 小型機関車ながら大変効率のよい釜であり、小気味いいドラフト音で走行してくれるのにその詳細な組立過程がないのは残念である。 ボイラーとエンジンのバランスのとれた優秀な機関車と言っていいだろう。
物足りないことは、水位計がないためにボイラー水位とその要となる注水ポンプの動作には十分配慮することである。 また、運転終了後に加減弁を締め切ったまま放置すると熱縮小で確実に固着することである。(汗)ノズルの形状に問題があるのかも知れない。固着を味わって加減弁を外すという大慌てをやったことがある。 実は再加熱するとOKだったようである。



ボイラーを作成時の記憶を元に描いてみよう。 丸い銅管状の内側下部に煙管二本を持つ単純な構造である。このボイラーの運転室側端面と底部を板金製の火室で覆い、底面から二本のアルコールバーナーで熱するのである。 燃焼ガスは、ボイラー底部を熱し、端面の煙管へと"C"字状に導かれる。つまり燃焼ガスは、底部→端面→煙管と余すところなくボイラーを熱するのである。煙突の排出力が十分であれば単純な構造の割にはよく燃焼する高効率のボイラーである。 複雑なボイラーの組み立てを楽しむというには物足りないのであるが、走行を楽しむ向きには歓迎される形式であろう。ちなみにC型のCは模型ボイラーを開発した J. T. Van Riemsdijk氏がセンタフリュー型、以下の煙管型、それにこの三番目の形式を出したのでC型としたというのが正解である。実は人の名前だとつい最近まで思っていた。(ペコリ)


これが二番目の発明。


そして三番目の発明。で、A,B,CのC型なのである。

この形式の欠点といえば燃焼ガスが運転室壁面・バックヘッドに直接当たるので此の箇所が高温になり、耐熱塗料が変色するほどであった。 我がJUMBOに初めて火を入れたところ、運転室に塗料や接着剤の焼ける臭いが立ちこめたので驚いた記憶がある。裏打ちするセラミックシートを指定枚数以上に重ねることが必要であった。 現在は後述するようにボイラー形状を半月状にし、その部分を板金製火室で覆って運転室のバックヘッドと若干の隙間を持たせた構造になった変形C型が増え、このように運転室内のバックヘッドが焼けるということが生じなくなっている。



閑話休題・ミニボイラー雑談
 やっぱり一番ゲージの小さなボイラーからの所感なので石炭好きの皆さまからは鼻先で笑い飛ばされそうである。が、私も石炭焚きは好きなのであるが、財力、筋力、保管場所が伴わないので断念せざるをえないのである。(残念)
ということなので玩具ボイラー愛好家の思いつきと思ってご覧いただきたい。

渡辺精一氏の著作より引用させてもらうとボイラーの馬力は次の式で計算されるとのことである。
あくまでも目安であって、気休めに過ぎないかも知れないとの一言も添えられている。

        ボイラ馬力=C*G/(1+G/Hs)

        G:火床面積(m2)
        C:木炭の場合10、石炭の場合11-12
        Hs:伝熱面積(m2)

参考文献:ライブスティーム(模型機関車の設計と製作):渡辺精一著:誠文堂新光社

限られた機関車全体の容積の中に水容量、表面積をいかに大きく確保し、火床面積を拡げるかを工夫されてきた。一番ゲージでは火床面積と云うよりもバーナー等の熱源の数と考えればいいのであろうか? 更にはこの熱量に対応してある程度の高圧化とそれに耐え得る構造を算出・設計することが模型においても大きな課題である。 もっとも、模型の場合はある程度の経験則があるようで自ずと常識的な値が決まっていくようである。 これも渡辺さんの本の受け売りである。(汗)

ボイラーの基本である円筒形炙り釜では、水容量は確保できても表面積が小さいのでなかなかお湯が沸かない。前項で述べた家にいる定置型エンジンの大きな丸胴ボイラーを思い出していただきたい。
それを改善したのが円筒の胴の底に細い管を数本付加し炎の中で水を循環させるようにした水管・スミシス式である。円筒に水管を付加するだけなので強度計算も作成も簡単である。旧式のアルコール炊き蒸気機関車ではよく見受ける形式である。アスターC12がこの形式のボイラーを採用している。

この後アスターのボイラーは色々形態を変えていくのであるが、高級品はロコ型ボイラ、米国向けはガス炊きセンターフリュー型ボイラーへ、国内向けは丸胴内部に煙管を内蔵した型式不明ボイラー、9600のロコ型ボイラー簡略版である水管併用ロコ型ボイラーへと何となく?分類されているようである。 機関車ごとに様々な工夫がされているようであるが、このように個別の手作り設計が進んだことで価格が上昇気味である。 何とかならないものかと思いつつ画一的では面白さも半減しそうでやむを得ないのかと気弱にもなっている。 これまでのアスターのボイラーには色々ありすぎて実は全てを掴み切れていないのが実態である。  まあ、私の目標でもないのでこのレベルの解説に留めて馬脚を現さないようにしておきたい。

最近の傾向を見ると標準化(あまり好きな言葉ではないが)でコストダウンを指向しているのか、変形C型ボイラーがアスターの主流になっているようだ。 そうであればもっと値段を下げてほしいものである。
では、次回はこのボイラー形式について紹介してみよう。







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