ライブスティーム雑記帳

ライブは力持ちか(2010.5.12 機種追記)


 石炭炊きの大型機関車のオーナーには笑い飛ばされそうであるが一番ゲージのライブ、それもアスターのものを中心にその力を考えてみた。そのきっかけは、2,3週前に北裏鉄道の方々と牽引力について嵐のようなメール交換である。岩岡さんお手製貨車の連結器部分が壊れたので強度についての神田さんのメールがきっかけであった。
以前にこのページのライブの力の項で渡辺精一さんの本を参考に計算式を紹介したが、実際の機関車にあてはめてみるには至らなかった。ちょうどいい機会なので数字の遊びをやってみよう。
実物にも適用される有名な計算式を改めて紹介すると次の通りである。

シリンダー出力Tc=D2XSXεP/W
D:シリンダー直径(cm) S:ストローク(cm) P:ボイラー圧力(kg/cm2)
W:動輪直径(cm) ε:圧力効率係数
 
連結器出力Td=ρTc-BX1/20
B:車体重量(kg) ρ:エンジン効率係数

使用する係数や数値は次のものとした。
ボイラー圧力はカタログに記述のない場合は3.5kg/cm2とする。
ただし、実際にピストンに働く効率は、一番ゲージでは配管等の抵抗も大きいことがありε=0.6とする。3気筒エンジン出力は、1.5倍 4気筒:2倍として算出する。
 Tcは、エンジンの出力であるが、機関車の連結器牽引力Tdは、エンジン出力が機関車自体の動作で損失するエネルギーと自らを動かすために使われるエネルギーを差し引かねばならない。通常は前者を20%と考え後者は自重の1/20とみなす。ρ=0.8
以上の条件を各モデルにあてはめて算出した結果を幾つかご紹介する。(単位はkg)  赤字は扱ったことのある機関車

 機種    シリンダー出力  連結器出力
 9600      1.48          0.93
 旧C622     1.63          0.94
 C622      1.63          0.80 
 C623      1.22          0.57
 D51327     1.68          1.00
 C56160     1.30          0.80
 C11227     1.21          0.74
 C571      1.05          0.52
 B20       0.99          0.65 
 BR03      1.14          0.57
 JUMBO    0.67         0.40
 ミカド      1.42          0.78
 HUDSON    1.56          0.79
 K4        1.13          0.52
 Daylight     1.68          0.77
 バークシャー 2.45        1.38 (2006.10.8 追加)
  D51(2007版) 2.12       1.31 (2007.4.23追加)
 BR 9FEveningstar 1.90    1.26  (2008.1.1 追加)
 BR 5MT    1.35         0.85 (2010.5.12)追加以下5機種
 木曾鐵     0.82         0.54
 GN S2     1.78         0.91
  SNCF 140C 1.34 0.82
 T3        0.79         0.53
 StarlingSingle 0.43         0.18


(複数気筒式)(数)
 KingGeogeV(4)  1.64       1.01 
 Duchess(4)    1.75       1.08
 SpamCan(3)   1.54        0.93
 GWR Castle(4)  1..55        0.97   (2010.5.12) 以下5機種
  A3 (3)       1.46        0.88
 A4 (3)       1.46        0.88
 SNACF U1(4)   1.35        0.67
 BR44(3)      2.06         1.30

(マレー型)
 BIGBOY     2.70          1.21
 アレゲニー   3.47          1.83
 GARRATT    3.21          2.02
 BR96       1.97          1.24

(ギアードロコ)
 WMシェイ    1.13          0.59 
   (ギア比1:2.) 2.26        1.18
 CLIMAX  0.86        0.39
   (ギア比1:2.5)  2.15        0.98   手回しでギア比を確認

 軸受けは、普通の平軸受けの場合、牽引車両は1/20の重量とみなすこととする。つまり機関車に1kgの牽引力があれば1kg/台の貨車を20両牽引できるのである。
渡辺さんの本によると平坦であれば1/100とみなしても良さそうであるが、実際の環境を考慮して1/20と甘く見ておけば良さそうである。
ここでは、9600C622よりも連結器出力があるとは意外であった。動輪サイズが計算結果に影響しているようである。実際には常用圧力がやや高く、自重もあって粘着力もあることから綱引きをやるとC622が勝ちそうな気がする。栗原さんの話によればJNR9600は、25両を牽引した実績があるとのことである。

神田さんからの指摘にもあったが、機関車の力は車体がスリップせずに牽引すればの話であって、動輪にかかる荷重、動輪の材質、軸受けの摩擦、線路との密着具合などのいわゆる粘着力によって実際の牽引力は異なるのである。実際の路線上ではカーブや傾斜によって大きく変動すると思われる。ここでは机上計算の遊びとして代表的なライブを取り上げた次第である。これらを眺めるとおもしろいことに大型機関車は1kg前後に設計してあるようである。車体強度、レイアウトの実状などを考慮すると妥当な値と思う。むやみに力を与えてもスリップするか貨車を壊してしまうかも知れない。
計算は、頭の体操のつもりで死蔵していたシャープの電卓でプログラムを組んでやってみた。久しぶりのプログラミングといっても玩具のようなものであるが出来上がったときは楽しかった。ついでにシリンダー数で出力計算できるようにしたのは云うまでもない、ダッチェスだってビッグボーイアレゲニー3気筒のA3の出力も一瞬である。でもこんな架空の遊びことをやっていると実物が欲しくなってしまうのでやめにした。

 計算結果で釈然としないのが複式マレーである。二次シリンダーは、一次シリンダーで利用した蒸気を再利用するのであるが同じ力を発揮させるためにボアを大きくしてある。と云うことは一次シリンダーの値で計算するといいのだろうと推測したがいかがなものであろうか。BR96は実物は当然のことながら岩岡さんのライブにも大いに興味をそそられている。その昔アスターから送られていたカタログが見つかったので計算した次第である。そういえばなぜかC622のカタログがない。「玉田さん残っていたら私にください。」(笑)(2005.3.27)


 2-8-4大型機関車バークシャーの計算値を追加した。45mmゲージとしては1.38kgという巨大な牽引力である。本当にそんな力が出るのか疑問であったが、栗原氏発明の牽引力測定器によればピーク値が1.4kgを指していた。計算結果とぴたりと一致するという結果である。上記の計算式が大変役に立つことが分かった。 がしかし、マレー型機関車は計算値よりも大きい値が出たので適合しないようである。確かアレゲニーではその重量も手伝って粘着力が大きいことに依るのか4kg強の牽引力を測定し見学者一同驚いてしまった。 とはいえ計算値通りに牽引力が出ない場合は何か原因があるのでその追及が必要であろう。 計算値よりも低い場合はやっぱり素人が作るのだから蒸気洩れ、エンジン位相のずれ、軸重のアンバランス、それにバーナー不燃焼もポイントと思われる。 さてあと原因と思われるものに何かなかっただろうか。(2006.10.7)


CLIMAXのエンジンを手回ししてギア比を確かめました。1:2と思っていたのですが、1:2.5程度だったので数値を修正しました。その結果大型機に匹敵する牽引力がありそうです。 WMシェイはエンジンの大きさから更に強力だというのはうなずけます。これはカタログから1:2として計算しました。(2006.11.2)


2007.4.27にD51が発売される予定である。 HP等の諸元をもとに新型D51の設計出力を算出した。何故かシリンダーのボアとストロークはつい最近まで公表されていなかったのであるが、15mmX22mmと判明したのでこの数値を用いた。それによると牽引力である連結器出力は1.31kgであり、計算値だけではBigboyに相当するパワーである。ボア15mmというのが大いに効いているようだ。 これは常用圧力を3.5kg/cm2で計算した場合であるが、最近のアスターライブの圧力はやや高めで設定されているようなので仮に4kg/cm2で算出すると1.55kgという大きな力を発揮することになる。 10数年前に売り出された同社のD51の牽引力と比較すればその差は550gである。実はこの数値の差は牽引力において20倍から100倍した重さの違いがあるのである。つまり貨車に乗せた11から55kgよけい重いものを引っ張ることが可能なのである。この数値以上を出すように今回組み立てる方々は頑張っていただきたいと願っている。(笑)(2007.4.23)


 2007年12月に英国最後の蒸気機関車イブニングスターがアスターから発売された。らしい。というのは発表と同時に完売したとのことである。この機関車は濃緑色のスリムな車体に2−10−0(Decapod)という動輪5軸のパワフルな軸配置を持つ美人系の蒸気機関車である。(笑) その昔、小川精機から3.5インチのものが販売された記憶がある。 弁装置はお馴染みのワルシャートであるが、弁は模型の殆どで採用されているスライド弁ではなく本物の機関車で広く採用されているピストン弁なのである。従ってクロスポートで無理に本物に疑似することもなく加減リンクの位置で文句をつけられることもなさそうである。圧力を上げるほどに蒸気の洩れやすい模型のピストン弁をいかに本物に近づけたかを取材できるのを楽しみにしている。

 ところで、ライブスチームは、評判の製品が発表されると英国、米国等ではあっという間に売れてしまうようであるが、お膝元の日本でははなはだお寒い状況が続いているようで愛好家としては悲しい限りである。 発売メーカのアスターにおかれても産業革命以来の機械史に支えられた彼の国々の文化をあてにするだけではなく、技術立国であるはずの日本でも同様な高まりが興るように努力されんことをお願い申し上げる次第である。
と新春ご挨拶代わりに一言述べさせていただいた。

おっと、アスター発表の諸元から算出した肝心のイブニングスターの出力を一行追加したのでご覧いただきたい。出力は相当のものがあるようだが、粘着力次第で効果に差が付くと思われる。この先観察を続けようと考えている。何でも車体にオモリを搭載し牽引力を増す設計が行われていると聞いている。 さてどうやって確かめようか。 自分で作るのが一番なのであるが・・・・・(汗)(2008.1.1)


その後一年半に関係した機関車の数値を追加しました。あくまでも計算値なので参考程度で見て下さい。太文字はこのHPで扱っている機関車です。(2009.7.1)


Western Maryland SHAY が、我が鐡道にやってきました。どうやら完全分解しなければ動かないと判断したので新品のキットを組むつもりで取り組むことにしました。上記の表にあるこの機関車を自分の手で再作成できるとは思いしていませんでした。ゆっくり作り直していきます。いずれHomepageに再組み立て記録を載せるつもりです。(2009.7.22)


アスターホビーから新機種が幾つか出たのでまだ計算していなかった機種を含めて再度出力を算出してみた。45mmゲージというサイズなので大きく違うことはないようである。出力を上げて長編成を牽引するとなると連結器強度も問題になる。特に自作貨車では考慮を要する。お持ちの機関車の参考になれば幸いである。 数値をきちんと並べなかったことは御容赦願いたい。(2010.5.12) 







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