からくり日記

2004年06月19日

ペーパークラフト

 ペーパークラフトとはいわゆる紙細工のことである。あ、折り紙は、対象外とし、紙を切り抜いてあるものを作り出していく工芸を対象として書いてみた。
欧米ではどうやら厳密にはカードモデリングペーパークラフトとを区別しており、私の取り組もうとしているものはカードモデリングのようであるが、一般的に馴染まれているペーパークラフトという単語で統一することとした。
 子供の時からいつの間にか慣れ親しんだ工作なので今更取り上げるまでもないだろうと思っていたが、詳細は後述することとして、最近驚くべきペーパークラフトの素材を手にして見直すこととした。
 ペーパークラフトらしいことをやった最初は、小一の頃紙の水族館で魚を切り抜いたことである。これは魚であることは分かる程度のたわいもない作品であった。
小四だと思うが、等高線の立体地図を学校で作らされた。これが今まで唯一の実用的なペーパークラフトである。手渡された教材は、佐賀県の立体地図セットであり、学校だけでなく我が家へも持ち帰って作ったので夏休みか何かの宿題だったような気もする。祖母や両親もその教材に感心して色々助言してくれた。
自分の住む地域を丁寧にはさみや小刀で切り出して貼り重ねると意外にも土地勘が付くものである。故郷を離れて40年近くになろうとしているが、県全体の高低差を何となく分かるのもこの地図作りの効用のようである。出来上がった立体白地図は、高低差で濃い茶、茶、薄茶、緑、薄緑等に塗り分け地名を貼り付け、仕上げの透明ニスを塗って完成させた。ここまで徹底して作らされたので記憶に鮮明に残ったのであろう。
我が家の子供達がこのような地図を作っていた記憶はないが、やったとしても世界や日本地図だったかも知れない。これでは、あまりにも広角過ぎて印象に残らないような気がする。
その後、紙工作に接する機会は色々あったような気がするが印象に残るものは少ない。

 随分経って、切り抜いて作る紙飛行機ブームがあった。これは実用的な遊び作品であり、簡単な飛行機を作ったことがある。これが、実に良く飛ぶのである。飛行機として十分に考えられたバランスある設計であり大変感心した。ただ、紙工作としては大変シンプルであり、もう少し組立にチャレンジ性があればいいのになぁと設計もしないくせに勝手なことを考えてしまった。
中学から高校時代には,HOゲージに手を染め、結果的には挫折してしまったが、ペーパー車体作りをちょっとだけやった経験がある。紙が紙でなくなることを手引き書の通りやって経験したものの、結局自分の技にすることは出来なかった。
インターネットの時代になりペーパークラフトのサイトを見つけるのに便利になった。問題は印刷である。印刷そのものにも問題があったが、ペーパークラフトに適する紙がなくて指をくわえていた時期があった。数年前、PMマット紙がペーパークラフト用として発売されているのを知り、ヤマハのサイトから季節のペーパクラフトをいただいて印刷をした上で知人に差し上げ感謝されたこともある。これ以降、電車や船のサイトを見つけては、公開された作品を集めている。これを書いているパソコンにもファイルの形で多数保管している。
海上自衛隊の大湊地方隊には、護衛艦の優れたペーパークラフト作品が掲載されている。その一方で、JR西日本には電車やレイアウトの作品集があったりと意外なところに面白い作品が公開されている。ペーパクラフトをテーマとするサイトを運用している方もいるくらいである。パソコンでゲームを楽しまず、お子さんと工作を楽しんでみたらいかがであろうか。

 何故興味をそそられるかと云えば、バーチャルなパソコンの世界からペーパクラフトをダウンロードして切り貼りしているうちに、その対極のリアルな世界が出来上がる。このバーチャルとリアルの落差が何とも云えぬ意外性を持って惹きつけるのである。

 最近、中高年向けパソコン誌やサライのような熟年向けの雑誌までがパソコンを使いなさいと煽っている。これに組み合わせているのがデジカメである。ところが、写真の原理をご存じない方々に無理強いし過ぎであると思うのは私だけであろうか。その一方でダウンロードしたものを印刷すれば誰でもさっさと楽しめるのがペーパークラフトであり、奥も深く、デジカメよりもコストパフォーマンスの高い楽しみと思っている。デジカメメーカに石を投げられそうであるが、猫も杓子も無理をしてデジカメというのもよろしくないので工作に興味のある年配でパソコン初心者の方々のチャレンジを期待する。

 五年ほど前、完成のあかつきには大型の振り子時計になる一冊丸ごとペーパークラフトという本を買ってしまった。結構いい値段だったので、「ハサミを入れてしまうと価値消滅だ。」という貧乏人根性から未だに新本同様であり、これでは何のために買ったのかよく分からない。退職後にでも作るつもりなんだろうかと自問自答が続いている。(苦笑)
 この本の徹底ぶりは、本=紙以外に準備する材料が歯車の軸用竹ひご、錘用の砂、それに錘を吊す糸であことでご理解いただけると思う。
この本は、文字盤だけならいざ知らず歯車の一つ一つも切り抜いて組み立てていかなければならず、並のペーパークラフトの数倍の労力が必要である。 耐久性を要求するテンプやその周りの歯車には一工夫を要すると思われる。
模型鉄道のペーパー車体と同様にニスや塗料で強度を増そうと考えているが、作る工程を想像する度に気持ちが萎えてしまう。辛い仕事から逃げたいという潜在的欲望のせいかもしれない。(苦笑)
それはともかく、ハンズ等に並ぶ手作り時計キットの単純さと比べると雲泥の差である。こちらが本当の手作りであり、時計の仕掛けも完全に理解できるのである。電子仕掛けブラックボックスのクォーツ時計を入れ、デザインに遊ぶ製品は、ものの仕掛けをテーマにする我がHomepageのには無縁な世界なのである。

 最近は、艦船のペーパークラフトに興味が移ってきた。どうやら昨秋、海上自衛隊の観艦式に行ったことに原因がありそうだ。(からくり日記・観艦式点描天気晴朗波低しを参照されたい)
webサイトを色々検索していて特に秀逸だと思ったのは、デジタルネイビーというところである。紙とは思えない作品が並んでおり、一度は作ってみたいと思っていた。今年の正月、サンプルとしてアメリカ海軍の掃海艇のファイルをダウンロードしたが、なかなか良くできている。船体から構造物まで作って大変楽しめたのである。が、マストや砲身の材料の調達にモタモタしたまま数ヶ月放置しているのでそろそろ家人の雷が落ちそうな雰囲気である。原価をかけずに楽しめたので費用対効果の高い遊びである。もう一隻、砲艦を造った。こちらは掃海艇と異なり船底まで作る本格版であったが、竜骨(キール)構造もどきまで作るようになっておりその凝りように大変感心した。ペラペラの紙を組み立てていくと次第にがっしりした船体になるのはまるで自分が造船しているような気持ちに浸ることが出来た。
つい最近、久しぶりにオークションを覗くと、このサイトのCD-ROMが何種類か売りに出ていた。わざわざ海外へ注文するまでもないと思っていたが、国内で買えるならばまあいいかと落札した。直接買うよりも高めであるが手っ取り早い慣れた方法を選択した。で、手元に来たのが、重巡洋艦「高雄」戦艦「扶桑」である。今回の目標は「高雄」であったが、出品者の誘いで「扶桑」はオークションとは別に直接買ってしまった。やっぱり私は好き者だなぁーと思ったのである。
重巡「高雄」は、「摩耶」、「愛宕」、「鳥海」という同型艦の最初の艦として1932年に製造されたと製作マニュアルに書いてあった。一等巡洋艦の約束通り山の名前を使ってあるので東京のリゾート地高尾山を取って名付けられたのである。


  <29枚にわたる壮大な部品群の戦艦「扶桑」の型紙>

 それはさておき、この二つの作品は、くだんのサイトでじっくり見ていたので大変楽しみであるとともに、果たして完成させられるのかと不安な気持ちで一杯である。ライブスティームとはまた違った忍耐力で取り組む必要がありそうである。完成作品をサイトで見ると、これが紙で作ったのだろうかという精密さである。

切り抜く部品が印刷された用紙は、重巡「高雄」は16ページ、戦艦「扶桑」は、何と29ページなのである。それぞれに10ページの組立説明書がついているのであるが、組立要領というものなので組立には大変苦労しそうである。CD-ROMなので失敗してもやり直せるのではあるが・・・・・・
これらの作品の作成者、いや設計者は、日本の軍艦が好きだと見えて戦艦「」も世に送り出している。オーストリアのザルツブルグの人が作った「扶桑」がサイトに紹介されているのでご覧になっていただきたい。手すりや階段の精密さは驚きである。私に作れるだろうかと思わされた直接の原因である。陸の大国だったオーストリアに海国日本が負けてなるかの意地で作ってみたい。(笑)(2004.6.17)







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