からくり鐡道運転日誌
待ちに待った雨の降らない運転日である。早朝、法事で九州の実家に向かうカミさんを駅まで見送り、慌ただしく準備にとりかかった。今日はアスターのカレンダー撮影があるということなので見学客も多いことだろう。それならば地味ながらも確実運転のJNR9600と英国LNWR JUMBOを連れていくことにした。本日はアルコール燃料なのでこれに合わせて道具立てを急いだ。燃料用アルコール、吸い出し用ファン、火付け棒、ライター、燃料注入用漏斗。これらはアルコールの場合必須の道具である。あと、何か忘れているような気がするけど・・・・・・ それにライブ運転に必要なものと云えばシリンダー潤滑油、一般の潤滑油、保守用工具一式、。 これらを大型のプラスチック製工具箱に詰め込んだ。重量は10数Kgはありそうである。これをキャリアに載せガラガラ曳いていくのである。 家を出ようとした途端、携帯が鳴った。「今日は9時だろう。」いかん、酔考さんからの確認の電話である。一昨日飲み屋で会った際にお誘い申し上げていたのである。準備に懸命となり、そのことをすっかり失念していた。 こんなドタバタがあったものの無事二人で吉祥寺の駅頭に立った次第である。
成る程、今日は人が多い。いつもより早く着いたにも関わらずザワザワしている。テーブルの上には既に神田さんがずらりとDBの機関車を並べて早くも準備が始まっていた。 久しぶりに和田ワークスの和田さんにお目にかかった。今日は自作のシェイであるが自作とは思えぬ姿である。もっともプロが作ったのであるからそのまま商品に近い姿である。WM-SHAYの殻を利用しボイラー、エンジン、走行装置を作ったのだそうだ。 庭には芝生が敷き詰められ見事な環境が仕上がりつつあり、オーナーの高橋さんのご苦労に感謝するのみである。我が家もこのようにしたいのであるが・・・・隣で酔考さんの悪魔の囁きが聞こえる。「・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・。」
<和田さんのアトランチック。 何故か不調で動きませんでした。>
苦労して運んだ2両を並べて、まずJNR9600に給水を始めた。。 さて、次は燃料補給である。と思って忘れ物に気が付いた。燃料注入用の細いノズル付きポリタンクである。何か忘れてきたような気がしていたのはこれだったのだ。今回も完璧ではなかった。(汗)という心の動きを酔考さんが知る由もなく撮影に走り回っておられる。
<当日のJNR9600 ぶれてしまいました。>
外から数えて2番線が空いている。ここを運転コースとして機関車を置き点火する。3分程度で圧力が2kg近くなったのでブロワーを外して通風弁に切り替えると2分ほどで安全弁が吹いてきた。効きの悪いドレイン弁を開いて水を排出するのであるが、C622ほど効かない。後ほど判明したのであるが、ドレイン弁を動作する棒が前方にずれておりこれに先輪が曲線で接触して機能しない不具合を発見、後日調整することとした。それを除きこの機関車は大変調子よく、重い金属製の貨車10数両を牽引して快走した。ドラフト音が鳴り響き、自己満足ではあるが、完成品の領域に達したと考えている。 本日は5本ある線路が全て塞がるという盛況で見物人は大満足と思われるのであるが、運転する側は冷や冷やものである。へそ曲がりの私は進行方向を逆にしたものだから更にハラハラである。が、不思議なことに緊張して運転すると接触事故の類はは全く起きず、燃料切れまで30分あまり楽しむことができた。このような運転状態なのでとても自分の機関車の走行シーンを写す余裕がなかった。 さて、次はLNWRのJUMBOである。この機関車には水位計が付いていないので安全弁を外して炭水車からの注水模様を観察し、程良い位置まで水が満たされたことを確認した。点火してブロワーで排気を引くとゴーッと云うような燃焼音を発して燃えている。このCタイプボイラーは模型用として考案されたのであるが、実に効率よい燃焼をするようである。ボイラーそのものは円筒に5本の煙管を素通し、その端面に板金製の燃焼室を付けた型式である。 4-5分経過し安全弁が吹き始めた。加減弁を開き凝結水を排出すると出発である。弁はスリップリターンクランクなので走らせたい方向へ押すのである。ドラフト音も快調に走り始めたが、「いかんいかん、、快調すぎる。」(汗) まるで新幹線である。加減弁をぐーーと絞ると母屋の前辺りで停止する。どうやらこの付近が僅かに登り勾配のようである。小さな機関車での微妙な弁調整は難しい。スピードが落ちると排気圧力も下がり燃焼が悪くなり、次第にボイラー圧力が落ちるというアルコール焚きの悪循環が出てしまう。 この現象を避けるために通風弁を微かに開いて運転するとゆっくり走行するが、それでもチェックバルブの開閉にシビアな反応をしてしまう。みっともないのであるが、重たい貨車を一両引かせようとするが、自動連結機ではなくヨーロッパの鎖式である。酔考さんがいつもの嗅覚でワイヤを探してくれたのでこれで無理矢理貨車を繋ぐと今度は安定して走行した。 しかしながら、時既に遅し、2周して燃料切れで終了した。 この機関車は、小型ながらも大変安定している。客車を牽引させてある程度の負荷をかけると切れの良いドラフト音で安定走行するようである。性能の良いライブと思っている。
<運転前のJUMBO 前回の不具合も無事直っていました。>
食事の後、線路ががらんとしているので9600の二度目の運転に着手した。手早く貨車を集めて午前中とほぼ同じ編成を整え出発進行である。2度目ともなるとスムーズにことが運ぶ。安定したところで逆転弁を少し戻してカットオフをするとドラフト音も高らかに走り始める。他の皆さんは機関車談義に花が咲いたのか運転に加わる人がいないのでカレンダー撮影のカメラマン氏らは困った。で、走行中の9600の人気が一気に高まり、ポーズを色々要求されることになった。レフ板で照明をあてられ、停車中のC622の側に立ってくれとか、安全弁が吹くまで停車してくれ、もうちょっと前、後ろといわれるものだから愛想良く対応しているうちに燃料がどんどん減ってしまった。運転を再開するもののしばらくして終了となった。 うまくカレンダーに掲載できるような写真になったか否か不明であるが、一寸の間のスター気分も悪くないなと思ってしまった。
<母屋側のヤード? Gゲージの一群が屯しています。>
本日は、持ち込んだ2両がアルコール焚きなので残水量も気にならないお気楽運転であった。クライマックスやC622のようなガス釜だとこうはいかない。 参加者、取材者、ギャラリーの多い慌ただしい雰囲気の運転会であったが、車種の多さ、お天気、そして木々が増えてきた緑の庭園鉄道、いずれの諸氏も満足したことであろう。オーナーの高橋さんに感謝し、それぞれ家路についたのである。 この日の模様は既に板橋さんの鉄道模型2666に紹介されているので是非ともご覧いただきたい。(2004.11.6) |
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